
東大を卒業後、戦略コンサル・VCで勤務していた「チルbot」です!
脱毛は老若男女問わず急速に広まっており、脱毛サロンやクリニックを検討している方も多いと思います。
しかし実は脱毛サロンやクリニックは倒産して潰れる、事業が上手くいかず撤退・閉店するケースが非常に多く、そうした場合は返金や脱毛サービスが受けられないという最悪のリスクも発生してしまうのです。
そうした脱毛サロンの閉店事例としては、俳優の新田真剣佑がプロデュースするAmSALONの2022年の倒産が挙げられます。
AmSALONはどうして倒産してしまったのか、消費者はどうやって身を守ればいいのか、脱毛サロンのビジネスモデルや危険性なども含めて徹底解説したいと思います。
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AmSALONが閉店・撤退した理由
早速ですが、俳優の新田真剣佑さんがプロデュースする脱毛サロン・AmSALONが2022年に閉店・撤退してしまった理由は以下の通りと推察されます。
- 初期の顧客獲得ができなかった
- 経営における意思決定や責任が曖昧だった
簡潔には以上終了なのですが、今回の記事の目的は「皆さんが脱毛サロンやクリニックを選ぶときに身を守れるようになってもらうこと」です。自分ごととして理解を深めるために、脱毛サロンの倒産や閉店について詳しく説明したいと思います。
脱毛を含むエステティック業の倒産や閉店は多い
実は脱毛サロンやクリニックの倒産や、倒産まで至らずとも閉店・閉業は非常に多いです。
脱毛クリニック・サロンの倒産は増えている
2019年に東京商工リサーチが実施した「2019年エステティック業倒産動向調査」によると、脱毛サロン・クリニックを含んだのエステティック業の倒産は、2019年に73件で過去最多となったそうです。

負債総額は29億2,200万円でしたが、その内訳としては負債1億円以上の大規模なもの5件、そして負債1億円未満の比較的小規模なものが68件で全体の9割以上となっており、小規模な個人サロンの倒産が進んでいることがわかります。
エステティックサロンは参入障壁が低く、個人経営の個人サロンが増えていますが、施術内容の差別化ができないため顧客獲得が難しく、顧客獲得に費やす広告費などがかさんで倒産してしまうパターンが増えているのです。
脱毛クリニック・サロンの撤退・閉店も増えている
そして倒産まで至らずとも、事業がうまくいかずに撤退・閉店してしまうケースも増えています。
特に最近では、俳優の新田真剣佑さんがプロデュースする「AmSALON」だけでなく、元NEWSの手越祐也さんがプロデュースする「TEGOSHI BEAUTY SALON」など、有名人・芸能人の人気や知名度を武器にした脱毛サロンやクリニックが増えていますが、軒並み撤退に追い込まれているのです。
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴
なぜ脱毛サロンやクリニックの倒産や撤退が相次いでいるのでしょうか?
まずはその前提として、脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴を説明したいと思います。
- 広告費を中心とした費用が先出する
- キャッシュは中長期的に回収する
- 黒字化まで時間がかかり中長期的な経営が必要
それでは順番に解説していきたいと思います。
広告費を中心とした費用が先出する
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴の1つ目は、「広告費を中心とした費用が先出する」というものです。
脱毛サロン・クリニックの運営に必要な費用としては主に以下のようなものがありますが、このうち大きな割合を占め、かつ重要度が高いものが「広告費」です。
- 広告費
- 店舗賃料
- リース料(脱毛機器をリースしている場合)、または減価償却費(脱毛機器を購入した場合)
- 人件費
脱毛サロン・クリニックを開業しただけでは当然お客さんは来てくれないので、広告やプロモーション、キャンペーンで認知を広げ、来客を促進する必要があります。こうした活動全般にかかる費用が広告費です。
そして、広告費を用いた活動の結果、お客さんが来店・契約をしてくれないと収益は発生しません。そのため収益を得るよりも先に広告費や店舗賃料、リース料、人件費などの費用が必要となり、お客さんが来るまで永遠にその費用を支払続けなければいけなくなります。
キャッシュは中長期的に回収する
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴の2つ目は、「キャッシュ(現金)は中長期的に回収」というものです。
種類にもよりますが、脱毛には10万円以上の費用が必要となります。多くの人にとっては高額に感じられるでしょう。
光脱毛 (美容脱毛) | ニードル脱毛 (電気脱毛) | レーザー脱毛 | |
---|---|---|---|
処置 | 光で毛根にダメージを与える | 針を刺し電流で一本ずつ処理 | レーザー光で毛根を破壊する |
特徴 | 2000年代に登場した 最も新しい脱毛方法。 近年でも新しい手法が登場。 | 150年近い歴史を持つ脱毛方法で、 ダンディハウス・メンズTBCなど 歴史あるクリニックが主流 | 1980年代に登場した 比較的新しい脱毛方法。 費用は高額でお試しはない |
自己処理を減らすために 必要な通院数と費用 | 8〜10回 (8〜10万円) | 5〜6回 (15〜20万円) | 5〜6回 (7〜9万円) |
ツルツルにするために 必要な通院数と費用 | 〜25回 (20-22万円) | 〜15回 (25-35万円) | 〜13回 (13-18万円) |
そのため多くの脱毛サロン・クリニックは分割払いに対応しており、月々数千円から脱毛を受けられるプランも用意しています(4年間で48回分割払いものプランも多いです)。つまり脱毛サロン・クリニックは一度にまとまったお金を支払ってもらえる場合ばかりではなく、分割された金額を少しずつ回収していくような場合も多いということです。
例えば現金支払いのラーメン屋であれば、ラーメンを提供した瞬間に収益が発生して現金を回収することができますが、脱毛サロンの場合はゆっくり時間をかけて現金を回収しなければいけないのです(※ファクタリングサービスなどを使っている事業者も多いとは思いますが、いずれにせよキャッシュフローを圧迫することには変わりません)。
黒字化まで時間がかかり中長期的な経営が必要
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴の3つ目は、「黒字化まで時間がかかる」というものです。
上述したように、脱毛サロン・クリニックにはお客さんを呼ぶための費用が先に必要となり、その結果お客さんが脱毛サービスに契約してくれてもすぐに全額を回収できるわけではなく、現金を少しずつ回収していく形になります。
そのため、広告が成功してお客さんを呼び込めたからと言ってすぐにその利益が発生するわけではなく、中長期的に時間をかけて利益を回収していくようなモデルになるのです。結果として、中長期目線でのシミュレーションを組んで、売上や利益など目先の誘惑に負けずにコツコツと経営をしていく必要があると考えられます。
後述しますが、こうした中長期的な経営ができず、誘惑に負けて出店やプロモーションを急ぎ、キャッシュフローを圧迫してしまうことが脱毛サロン・クリニックの倒産の主な理由だと考えられます。
脱毛サロン・クリニックのリスク・危険性
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴を踏まえ、倒産や撤退に直結するその中に潜んだリスクや危険性を説明したいと思います。
- 競争環境の激化
- 顧客の取り合いによる低価格競争、広告費の高騰
- 短期目線の経営によるキャッシュフローの圧迫
こちらも順番に解説していきたいと思います。
競争環境の激化
脱毛サロン・クリニックのリスクの1つ目は「競争環境が激化していること」です。
最近では、ローランドなどの有名人・芸能人が脱毛サロンのプロデュースを始めたりと、脱毛業界への新規参入が増えています。Youtubeなどで脱毛サロンの広告やキャンペーンを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
当然その結果成功するかは別問題なのですが、以下のような理由から脱毛業界は参入障壁が比較的低いのです。
- 在庫不要で低リスク
- 人材育成が容易
- 多数乱戦の業界構造
- 脱毛器具・機械の低価格化
そして参入障壁が低いということは、参入する事業者が増える、つまり競合・ライバルが増えやすいということです。
脱毛に対するニーズは増えているものの、当然脱毛サロンやクリニックの数が増えれば、そのニーズを抱えているお客さんの取り合いになります。脱毛業界は、競合が多いレッドオーシャンの厳しい競争環境になりつつあるのです。
顧客の取り合いによる低価格競争、広告費の高騰
脱毛サロン・クリニックのリスクの2つ目は「顧客の取り合いにより低価格競争や広告費の高騰が進んでいること」です。
脱毛業界の競争環境が激化しているということは伝えさせていただきましたが、そうした環境で脱毛サロンやクリニックはどうすれば良いのでしょうか?他よりも安くサービスを提供したり、大々的な広告やキャンペーンを実施して、自分達のサロンやクリニックに目をつけてもらうようにしなければいけません。
当然低価格化は収益を圧迫しますし、様々なサロンやクリニックが広告の希望を出すと、広告費が高騰するだけでなく、広告のパフォーマンス・効果も悪化してしまうはずです。
短期目線の経営によるキャッシュフローの圧迫
脱毛サロン・クリニックのリスクの3つ目は「短期目線の経営によりキャッシュフローを圧迫してしまうこと」です。
解説した通り、脱毛サロン・クリニックは黒字化まで時間がかかるため中長期的な経営が必要です。お客さんが来てくれているからと言ってキャッシュをすぐに回収できるわけではなく、すぐに利益が出るわけでもありません。
しかし調子が良く見えると成功を急いでしまうのが人間の性です。
「もっと広告費を掛ければもっとお客さんが来てくれるのではないか」
「店舗を出店すればさらに規模拡大できるのではないか」
「ライバルが出てくる前にもっと投資をして絶対的なポジションを築くべきではないか」
こうした悪魔の囁きに負けてしまい、広告費の増加や急速な出店など規模拡大へと向かってしまいます。そしてそのための追加費用が短期的に必要になるものの、上手くいかずに収益やキャッシュを回収できず債務超過に陥ってしまうのです。これは脱毛サロンやクリニックだけでなく、あらゆるビジネスに共通する典型的な失敗パターンです。
そしてこうした誘惑はうまく行っている時に来るからこそ冷静な判断ができなくなってしまいます。「これだけお客さんが来ているのだから、広告費や店舗数を増やせばもっとうまくいくだろう」と考えてしまいがちなのです。
そのため私は、脱毛サロンやクリニックはきらびやかに見えますが、質実剛健な経営者の方が成功すると考えています。
AmSALONの閉店・撤退とその原因
こうしたリスクや危険性から閉店・撤退に至ってしまった脱毛サロン・クリニックはいくつかありますが、そのうち代表的なものの1つが2022年5月の「AmSALON」の閉店・撤退です。
AmSALONとは
新田真剣佑さんは、俳優の千葉真一を父親に持つ1996年生まれ。「ちはやふる」で注目を集め、2021年には三浦春馬さんと共演した「ブレイブ―群青戦記―」、「るろうに剣心 最終章 The Final」などに出演して人気を集めています。
そして同じく2021年3月9日、女性専用の全身脱毛サロンを東京・池袋と福岡・天神にオープンすることを発表しました。アメリカで生まれ育った新田さんのルーツを生かし、欧米と日本の文化をミックスした脱毛を提供するとのことでした。具体的には欧米で主流のすぐに効果が出るワックス脱毛と、日本で主流の将来も生えにくくなる光脱毛を同時に行うもののようです。
また、最新のSHR脱毛を行えるハイスペック脱毛機「LUMIX-A9」を全店舗に導入しているとのことでした。
IPL脱毛 | SSC脱毛 | SHR脱毛 | THR脱毛 | |
---|---|---|---|---|
概要 | 毛根に直接ダメージを与えて脱毛 | 抑毛効果があるビーンズジェルを塗布して脱毛 | 毛を生み出すバルジ領域にダメージを与えて脱毛 | 毛根とバルジ領域にダメージを与えて脱毛 |
効果 | 細い毛には反応しにくい | 抑毛のため効果は低い | あらゆる状態の毛に反応するため効果が高い | あらゆる状態の毛に反応するため更に効果が高い |
即効性 | 毛根に直接ダメージを与えるため即効性がある | 毛根に直接ダメージを与えないため即効性がない | 毛根に直接ダメージを与えないため即効性がない | 毛根に直接ダメージを与えるため即効性がある |
痛みの弱さ | 直接ダメージを与えるので肌への負担が強い | ジェルの塗布のため痛みは弱い | 毛根に直接ダメージを与えないので痛みは弱い | 毛根に直接ダメージを与えないので痛みは弱い |
2022年5月に全店舗が閉店
しかし、そんなAmSALONはオープンから1年まもない2022年5月末に全店舗を閉店してしまいました。
一体何があったのでしょうか?
「平素は格別のお引き立てを賜り、深く御礼申し上げます。
AmSALON (株式会社AMサロン)は事業統合に伴い、2022年5月末日を持って池袋店・天神店におけるサービスの提供を停止させていただく運びとなりました。
ご愛顧いただいた皆様へ心より感謝申し上げますとともに、急な報告となり、ご迷惑をおかけ致しますことを深くお詫び申し上げます。
AmSALONにてご契約を頂いているお客様におかれましては、弊社よりメールや文書等でご案内を差し上げておりますが、ご不明な点がございましたらご遠慮なくお問い合わせくださいませ。
大変ご迷惑をおかけ致しますことを深くお詫びを申し上げるとともに、オープン以来のご支援に心より感謝申し上げます。
AmSALONをご利用いただき、誠にありがとうございました」
https://www.j-cast.com/2022/06/01438543.html?p=all
AmSALONが閉店・撤退した理由は?
AmSALONの閉店・撤退の理由については、公開情報が少なく限られた情報からの分析にはなりますが、初期の顧客獲得ができなかったことが原因ではないかと推察されます。
- 初期の顧客獲得ができなかった
- 経営における意思決定や責任が曖昧だった
初期の顧客獲得ができなかった
1点目の「初期の顧客獲得ができなかった」について、2021年のオープン時、東京・池袋と福岡・天神の2店舗に展開していたAmSALONは、その後も店舗数を広げることなく、閉店時の2022年5月もこの2店舗をクローズした形でした。
つまりはオープンからクローズまで店舗拡大するような事業進捗が得られなかったと推察され、オープン後の初期顧客の獲得がうまくいかず、そのまま失速してしまったのではないかと考えています。
この点は、4店舗から7店舗まで拡大後、5店舗にまで縮小して閉店した元NEWSの手越祐也さんのサロンとは明確な違いと言えるでしょう。俳優としての人気がある新田さんと、アイドル的人気がある手越さんとでは、ファンの熱狂度やその行動にも差があったのではないかと思います。
経営における意思決定や責任が曖昧だった
そして2点目の「経営における意思決定や責任が曖昧だった」について、これは脱毛だけでなくあらゆるビジネスに通じる失敗ケースだと思います。実は新田さんはAmSALONの代表ではなく、代表取締役社長を務めていたのは唐澤俊章さんという方です(ホームページより)。
手越さんのサロンも同じく、代表を務めていたのは手越さんではありませんでした。手越さんやローランドさんなど、恐らく新田さんの場合も手越さんの場合も「新井さんの知名度や発信力を用いれば脱毛サロン事業で成功できるはず」と持ちかけたのではないかと考えられます。
結果としてですが、恐らく新田さんはある意味名前貸しをしている状態で、サロンの実質的な運営には携わっていなかったのではないかと推察しています。共同代表のスタートアップがうまくいかないように、どんなビジネスでも「最後に責任を取って事業を進める人」が決まっていることは極めて重要です。新田さんも多忙な中でなかなかコミットできず、最初の失速後のリカバリーがうまくできなかったのではないでしょうか。
AmSALONの閉店・撤退で返金はされた?
Amsalonが閉店・撤退後、お客さんが支払った料金は返金されたのでしょうか?
閉店発表時、公式ホームページでは「AmSALONにてご契約を頂いているお客様におかれましては、弊社よりメールや文書等でご案内を差し上げておりますが、ご不明な点がございましたらご遠慮なくお問い合わせくださいませ」と発表しています。
おそらくは手越さんのサロン同様、脱毛を受けられない、返金がされないといった最悪のリスクはなかったのではないでしょうか。これはAmSALONがあくまで「閉店・撤退」したのであって、債務の支払い義務を免れる「破産・倒産」ではなかったからでしょう。
通っている脱毛サロンが倒産したときに返金ができるか、支払い停止ができるかなどの対応についてはこちらの記事で解説しているので、脱毛を検討している方はぜひみていただけたらと思っています。
倒産の危険がある脱毛サロン・クリニックは絶対に選んではいけない!
このように、万が一通っている脱毛サロンが潰れる・破産する・倒産するようなことがあった場合には、返金もされず、サービスも受けられないことが一般的です。
実際にエタラビや脱毛ラボが倒産した際には、弁護士を通じて集団訴訟を検討する方もいたようですが、そもそもその手間暇は果てしなく、結局は泣き寝入りになってしまうことが多いはずです。
そのため、私は脱毛を検討している方には「倒産や破産のリスクがないサロンやクリニックを選ぶこと」を他のどんなことよりも大切にしてほしいと考えています。これは実際に世の中で起こった事実なのです。
まとめ
脱毛サロン・AmSALONの閉店・撤退について、その理由や原因を説明させていただきました。
こうしてビジネス的な側面から見てみると、「小規模の脱毛サロンは選ばない方が良い」など新しい側面が見えてくるのではないでしょうか。他のポイントも含めて脱毛を検討している方に向けた選び方や基準はこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください!