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アリシアクリニックの倒産騒動や経営難をビジネスモデルから徹底解説

東大を卒業後、戦略コンサル・VCで勤務していた「チルbot」です!

皆さんは、何かを買ったり、サービスを選ぶ際にどのような基準で決めますか?

私の場合、まずはその商品/サービスの運営会社、そして業界全体の分析を行います。運営会社の経営状況や拡大状況を分析すると、表面的な商品/サービスからは一見して見えないリスクが見えてくるからです。

これは脱毛クリニックの検討では特に重要です。実は経営難に陥り破産/倒産した脱毛サロン/クリニックは数多く、先払いした脱毛サービスが受けられず、返金もされない最悪の状況に追い込まれてしまった被害者がたくさんいるのです。

今回は、2024年12月に破産を申請した脱毛サロン・アリシアクリニックについて、破産に至った経緯や破産の原因の考察/分析を行ってゆきます。実は破産以前にも見られた悪いシグナルはなんだったのでしょうか?非常に示唆に溢れており、脱毛を考えている方であれば絶対に知っておいて損はないと断言します。

脱毛を検討している方はもちろん、ビジネスパーソンの方にも役立つ内容になっているはずです。

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目次 表示

はじめに|脱毛サロン選びには経営状況の安全性が最重要

2024年12月にアリシアクリニックが破産を申請したニュースは、脱毛業界に大きな衝撃をもたらしました。実は以前からもミュゼプラチナムやエタラビ、脱毛ラボなど、多くの脱毛サロンが経営難や破産をしています。こうした状況からもわかるように、脱毛サロン・クリニックを選ぶ際には「経営状況の安全性」をチェックすることが何より重要なのです。

本記事では、そんな倒産・破産が相次ぐ脱毛業界において2024年12月に破産申請を行い衝撃を与えたアリシアクリニックを取り上げ、会社情報や歴史、破綻前から明らかだった経営リスクの有無などを分析します。

あわせて、近年の業界動向や安全な脱毛サロン選びのポイント、そして筆者が最も信頼できると考えるSBCメディカルグループの最大手ブランド湘南美容クリニックについてもご紹介します。さらに、過去の破産事例でも全額保証を受けられた実績があるMarriott Bonvoy アメリカン・エキスプレス・プレミアム・カードの活用法も解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

全国225院に展開

2023年にゴリラクリニックを買収、2024年に上場を果たした国内最大手・SBCメディカルグループの最大ブランド。上場により経営状況の透明性とガバナンスが担保、突然の倒産リスクが極めて低い

アリシアクリニックの倒産騒動が起こった理由

2024年12月、全国約40店舗を展開していた脱毛クリニック「アリシアクリニック」を運営する医療法人社団美実会と、関連の一般社団法人八桜会の2社は東京地裁へ破産を申請しました。

顧客への被害は甚大で、負債金額は、美実会が債権者5万7498人に対して72億9546万円、八桜会が債権者3万4320人に対して51億7587万円。2社合計の負債総額は債権者9万1818人に対して124億7133万円となっており、先払いした脱毛料金が返金もされず脱毛サービスも受けられない最悪の事態に陥っています。

そんなアリシアクリニックの倒産騒動が起こった理由は以下の通りだと推察しています。

アリシアクリニックの倒産騒動が起こった理由
  1. 爆弾を抱えた自転車操業による急拡大
  2. 経営者の露出増加という悪いシグナル
  3. 遠い黒字化と2回の事業譲渡

簡潔には以上終了なのですが、今回の記事の目的は「皆さんが脱毛サロンやクリニックを選ぶときに身を守れるようになってもらうこと」です

自分ごととして理解を深めるために、脱毛サロンの倒産や閉店について詳しく説明したいと思います。

脱毛を含むエステティック業の倒産や閉店は多い

実は脱毛サロンやクリニックの倒産や閉店/閉業は非常に多いのです。

脱毛クリニック・サロンの倒産は全体的に増えている

2024年に東京商工リサーチが実施した「エステティック業倒産動向調査」によると、脱毛サロン・クリニックを含んだエステティック業の倒産は、2024年に99件で過去最多となっています。

同様の調査は2019年にも「2019年エステティック業倒産動向調査」として行われていますが、2019年に73件で過去最多となっていた倒産数はコロナ禍で一服したものの、2023年、2024年と過去最多を更新しています。

これはおそらく、コロナ禍における補助金や支援金により一時的に倒産が抑制されたものの、支援策の終了後に実態としてのビジネスが持続できず倒産が増加したことが要因と考えられます。

小規模な個人の脱毛サロンの倒産が増えている

そして2019年調査では、倒産したエステの負債総額は29億2,200万円でしたが、その内訳は負債1億円以上の大規模なものが5件、負債1億円未満の比較的小規模なものが68件で全体の9割以上となっており、小規模な個人サロンの倒産が進んでいることがわかります。

エステティックサロンは参入障壁が低く、個人経営の個人サロンが増えていますが、施術内容の差別化ができないため顧客獲得が難しく、顧客獲得に費やす広告費などがかさんで倒産してしまうパターンが増えているのです。

大規模な脱毛クリニックの倒産も大きな話題・社会問題に

近年では大規模クリニックの倒産も世の中を騒がせています。2024年12月に破産した医療脱毛サロン「アリシアクリニック」運営会社2社の倒産では、約10万人が被害を受けました。

また、「全身脱毛サロンC3」運営の株式会社ビューティースリー(2023年9月破産、負債80億円)の被害者(債権者)は約4万6,000人、「脱毛ラボ」運営の株式会社セドナエンタープライズ(2022年8月破産、負債60億円)は約3万人、「銀座カラー」運営の株式会社エム・シーネットワークスジャパン(2023年12月破産、負債58億5,700万円)は約10万人など、大型倒産で被害者の多さが目立ちます。

有名タレントなどを起用した脱毛サロンの施術契約を信頼し、多額の前払金を支払い、未施術分が残ったまま倒産してトラブルに発展しているのです。

脱毛サロン/クリニックの倒産の影響

脱毛サロンが破綻すると、顧客が前払いした施術代の返金は困難なケースが大半です。被害者は2023年〜2024年の2年超で少なくとも約27万人に達し、信販会社やクレジットカード会社との対応に追われる利用者も少なくありません。脱毛サービス自体に対する消費者の信頼感が低下し、業界全体への不信感が広がる結果となっています。

脱毛サロン/クリニックの撤退・閉店も増えている

そして倒産や破綻まで至らずとも、事業がうまくいかずに撤退/閉店してしまうケースも増えています。

特に最近では、元NEWSの手越祐也さんがプロデュースする「TEGOSHI BEAUTY SALON」だけでなく、俳優の新田真剣佑さんがプロデュースする「AmSALON」など、有名人・芸能人の人気や知名度を武器にした脱毛サロンやクリニックが増えていますが、軒並み撤退に追い込まれているのです。

脱毛サロン/クリニックのビジネスモデルの特徴

なぜ脱毛サロンやクリニックの倒産や撤退が相次いでいるのでしょうか?まずはその前提として、脱毛サロン/クリニックのビジネスモデルの特徴を理解することが重要です。

脱毛サロン/クリニックのビジネスモデルの特徴
  1. 根本的な差別化が難しく参入障壁が低い
  2. 広告費を中心とした費用が先出する
  3. キャッシュは中長期的に回収する
  4. 黒字化まで時間がかかり中長期目線の経営が必要

これらの特徴については以下で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。

①根本的な差別化が難しく参入障壁が低い

脱毛サロン/クリニックのビジネスモデルの特徴の1つ目は、「根本的な差別化が難しく参入障壁が低い」です。

まず差別化については、多くのサロンやクリニックが提供する脱毛サービス(例えば、レーザー脱毛、光脱毛、ニードル脱毛)は、基本的に標準化された同じ技術に基づいており、機器についても最新のレーザー機器や光脱毛器が多くのサロンで採用されています。つまりサロンやクリニック間で提供する施術内容に大きな差異が生まれにくいのです。

さらに参入障壁については、大規模な設備投資や高額なライセンス費用が不要なため、比較的少ない資本で新規参入が可能で、小規模な個人サロンが次々と市場に出現しています。

これにより、脱毛サロン/クリニックはサービスの質や内容での差別化が難しく、広告投資による知名度競争や価格競争に陥りやすくなるのです。この点が2つ目の特徴に繋がっていきます。

②広告費を中心とした費用が先出する

脱毛サロン/クリニックのビジネスモデルの特徴の2つ目は、「広告費を中心とした費用が先出する」です。

脱毛サロン/クリニックの運営に必要な費用としては主に以下のようなものがありますが、このうち大きな割合を占め、かつ重要度が高いものが「広告費」です。

脱毛サロン・クリニックの主な費用
  1. 広告費
  2. 店舗賃料
  3. リース料(脱毛機器を借りている場合)、または減価償却費(脱毛機器を購入した場合)
  4. 人件費

脱毛サロン・クリニックを開業しただけでは当然お客さんは来てくれないので、広告やプロモーション、キャンペーンで認知を広げ、来客を促進する必要があります。こうした活動全般にかかる費用が広告費です。上記のように根本的な差別化が難しく競合も多い中で、各社が様々な広告や、割引クーポンなどのプロモーションを行っています。

当然ですが、広告費を用いた活動の結果、お客さんが来店・契約をしてくれないと収益は発生しません。そのため収益を得るよりも先に広告費や店舗賃料、リース料、人件費などの費用が必要となり、お客さんが来るまで永遠にその費用を支払い続けなければいけなくなります。

このように広告で獲得した顧客と契約し、多額の前払金を運転資金に充てる手法で事業を拡大している脱毛サロンも多いですが、契約数が鈍化すると、出店費用や広告費などが負担になり、前払金を返金できない状況に陥るのです。

③キャッシュは中長期的に回収する

脱毛サロン/クリニックのビジネスモデルの特徴の3つ目は、「キャッシュは中長期的に回収する」というものです。

種類にもよりますが、脱毛には10万円以上の費用が必要となります。多くの人にとっては高額に感じられるでしょう。

光脱毛
(美容脱毛)
ニードル脱毛
(電気脱毛)
レーザー脱毛
処置光で毛根にダメージを与える針を刺し電流で一本ずつ処理レーザー光で毛根を破壊する
特徴2000年代に登場した
最も新しい脱毛方法。
近年でも新しい手法が登場。
150年近い歴史を持つ脱毛方法で、
ダンディハウス・メンズTBCなど
歴史あるクリニックが主流
1980年代に登場した
比較的新しい脱毛方法。
費用は高額でお試しはない
自己処理を減らすために
必要な通院数と費用
8〜10回
(8〜10万円)
5〜6回
(15〜20万円)
5〜6回
(7〜9万円)
ツルツルにするために
必要な通院数と費用
〜25回
(20-22万円)
〜15回
(25-35万円)
〜13回
(13-18万円)
脱毛の種類と費用の目安

そのため多くの脱毛サロン/クリニックは分割払いに対応しており、月々数千円から脱毛を受けられるプランも用意しています(4年間で48回分割払いものプランも多いです)。つまり脱毛サロン・クリニックは一度にまとまった現金収入を得る場合だけではなく、分割された金額を少しずつ回収する場合も多いということです。

例えば現金支払いのラーメン屋であれば、ラーメンを提供した瞬間に収益が発生して現金を回収することができますが、脱毛サロンの場合はゆっくり時間をかけて現金を回収しなければいけないのです(※ファクタリングサービスなどを使っている事業者も多いとは思いますが、いずれにせよキャッシュフローを圧迫することには変わりません)。

④黒字化まで時間がかかり中長期的な経営が必要

脱毛サロン/クリニックのビジネスモデルの特徴の4つ目は、「黒字化まで時間がかかる」というものです。

上述したように、脱毛サロン/クリニックにはお客さんを呼ぶための費用が先に必要となり、その結果お客さんが脱毛サービスに契約してくれてもすぐに全額を回収できるわけではなく、現金を少しずつ回収していく形になります。

そのため、広告が成功してお客さんを呼び込めたからと言ってすぐにその利益が発生するわけではなく、中長期的に時間をかけて利益を回収していくようなモデルになるのです。結果として、中長期目線でのシミュレーションを組んで、売上や利益など目先の誘惑に負けずにコツコツと経営をしていく必要があると考えられます。

後述しますが、こうした中長期的な経営ができず、誘惑に負けて出店やプロモーションを急ぎ、キャッシュフローを圧迫してしまうことが脱毛サロン・クリニックの倒産の主な理由だと考えられます。

脱毛サロン/クリニックのリスク/危険性

脱毛サロン/クリニックのビジネスモデルの特徴を踏まえ、倒産や撤退に直結するその中に潜んだリスクや危険性を説明したいと思います。

脱毛サロン/クリニックのリスク/危険性
  1. 競争環境の激化
  2. 顧客の取り合いによる低価格競争、広告費の高騰
  3. 短期目線の経営によるキャッシュフローの圧迫

これらの特徴については以下で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。

①競争環境の激化

脱毛サロン/クリニックのリスクの1つ目は「競争環境が激化していること」です。

最近では、ローランドさんなど有名人・芸能人が脱毛サロンのプロデュースを始めたりと、脱毛業界への新規参入が増えています。Youtubeなどで脱毛サロンの広告やキャンペーンを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

当然その結果成功するかは別問題なのですが、以下のような理由から脱毛業界は参入障壁が比較的低いのです。

 脱毛業界の新規参入のハードルが低い理由
  1. 在庫不要で低リスク
  2. 人材育成が容易
  3. 多数乱戦の業界構造
  4. 脱毛器具・機械の低価格化

そして参入障壁が低いということは、参入する事業者が増える、つまり競合・ライバルが増えやすいということです。

脱毛に対するニーズは増えているものの、当然脱毛サロンやクリニックの数が増えれば、そのニーズを抱えているお客さんの取り合いになります。脱毛業界は、競合が多いレッドオーシャンの厳しい競争環境になりつつあるのです。

②顧客の取り合いによる低価格競争、広告費の高騰

脱毛サロン/クリニックのリスクの2つ目は「顧客の取り合いにより低価格競争や広告費の高騰が進んでいること」です。

脱毛業界の競争環境が激化しているということは伝えさせていただきましたが、そうした環境で脱毛サロンやクリニックはどうすれば良いのでしょうか?他よりも安くサービスを提供したり、大々的な広告やキャンペーンを実施して、自分達のサロンやクリニックに目をつけてもらうようにしなければいけません。

当然低価格化は収益を圧迫しますし、様々なサロンやクリニックが広告の希望を出すと、広告費が高騰するだけでなく、広告のパフォーマンス・効果も悪化してしまうはずです。

③短期目線の経営によるキャッシュフローの圧迫

脱毛サロン/クリニックのリスクの3つ目は「短期目線の経営によりキャッシュフローを圧迫してしまうこと」です。

解説した通り、脱毛サロン・クリニックは黒字化まで時間がかかるため中長期的な経営が必要です。お客さんが来てくれているからと言ってキャッシュをすぐに回収できるわけではなく、すぐに利益が出るわけでもありません。

しかし調子が良く見えると成功を急いでしまうのが人間の性です。

「もっと広告費を掛ければもっとお客さんが来てくれるのではないか」

「店舗を出店すればさらに規模拡大できるのではないか」

「ライバルが出てくる前にもっと投資をして絶対的なポジションを築くべきではないか」

こうした悪魔の囁きに負けてしまい、広告費の増加や急速な出店など規模拡大へと向かってしまいます。そしてそのための追加費用が短期的に必要になるものの、上手くいかずに収益やキャッシュを回収できず債務超過に陥ってしまうのです。これは脱毛サロンやクリニックだけでなく、あらゆるビジネスに共通する典型的な失敗パターンです。

そしてこうした誘惑はうまく行っている時に来るからこそ冷静な判断ができなくなってしまいます。「これだけお客さんが来ているのだから、広告費や店舗数を増やせばもっとうまくいくだろう」と考えてしまいがちなのです。

そのため私は、脱毛サロンやクリニックはきらびやかに見えますが、質実剛健な経営者の方が成功すると考えています。

アリシアクリニックの破産/倒産騒動とその原因

こうしたリスクや危険性から閉店・撤退に至ってしまった脱毛サロン/クリニックはいくつかありますが、そのうち代表的なものの1つは、記憶にまだ新しい2024年12月のアリシアクリニックの倒産騒動です。

アリシアクリニックとは

「アリシアクリニック」は、関東エリアを中心に展開する医療脱毛専門のクリニックです。

2016年10月には、女優の神田沙也加さんを初のイメージキャラクターとして起用し、知名度を高めました。その後も、平祐奈さん(2019年12月)や見上愛さん(2021年10月)など、著名な女優を起用してプロモーションを展開しています。

特に、見上愛さんが出演するブランドムービーでは、緑黄色社会の楽曲「Mela!」が使用され、話題となりました。これらのプロモーションで「アリシアクリニック」の名前を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

アリシアクリニックの倒産騒動の経緯

そんなアリシアクリニックの倒産騒動については、事業譲渡や子会社化などビジネス的な観点が深く関わっています。わかりやすく図解するとともに、年表でまとめてみたので、読み物を読む感覚でご覧いただけたらと思っています。

2010年

医療法人社団美実会の創業

まず2010年1月、のちに「アリシアクリニック」を開業する医療法人社団美実会が創業し、同年9月に法人化されました。

2011年

アリシアクリニックの開業

医療法人社団美実会は医療脱毛専門の「アリシアクリニック」を開業し、積極的な出店を開始しました。

2016年

神田沙也加さんをイメージキャラクターに起用、積極的な広告投資へ

女優の神田沙也加さんを初のイメージキャラクターとして起用し、テレビCMや広告展開を強化しました。その後も平祐奈さん(2019年12月)や見上愛さん(2021年10月)など、著名な女優を起用してプロモーションを展開しています

2021年

年間収入約163億1500万円を達成

こうした積極的な広告戦略とサービス拡充により、2021年4月期には年間収入約163億1500万円を記録し、ピークを迎えました。

2021年

一般社団法人八桜会の設立

2021年7月には関連法人として一般社団法人八桜会が設立され、「じぶんクリニック」の運営を開始しました。

「アリシアクリニック」は、豊富な施術メニューや高度な医療技術を提供し、幅広い年齢層の顧客に対応していた一方、「じぶんクリニック」は、比較的リーズナブルな価格設定やシンプルな施術プランを提供することで、若年層や初めて医療脱毛を受ける顧客をターゲットとしていました。つまり医療脱毛市場におけるさらなる規模拡大と多様な顧客ニーズの対応が目的と考えられます。

ここまでは順調だったのですが、この後不穏なニュースが飛び込んできます。

2023年

親会社から離脱した直後に親会社が破産手続き開始

2023年11月、美実会と八桜会は、親会社である株式会社エム・シーネットワークスジャパン(「銀座カラー」運営)のグループを離脱しました。しかしその直後の12月に、エム・シーネットワークスジャパンが破産手続きを開始したのです。

エム・シーネットワークスジャパンは「銀座カラー」を展開し、全国に約50店舗を構えるなど積極的な事業拡大を行っていましたが、新型コロナウイルスの影響による利用客の減少や、多額の広告宣伝費が経営を圧迫し、資金繰りが悪化していました。「銀座カラー」は手遅れで完全にサービスを停止したものの、アリシアクリニックやじぶんクリニックはまだ見込みがあったので、エム・シーネットワークスジャパンのグループから離脱を図ったのでしょう。しかし当然銀座カラー以外にも問題があることが明るみになってゆきます。

2024年7月

「じぶんクリニック」を「アリシアクリニック」へ統合

八桜会は運営していた「じぶんクリニック」の屋号を「アリシアクリニック」へ変更し、ブランドを統合しました。この統合の主な目的は、広告宣伝費の削減による資金繰りの改善でした。脱毛業界の競争激化による収益性の低下や、過大な広告費用の負担の中で、ブランドを一本化することで、広告宣伝費の削減と経営効率の向上を図る狙いがありました。

しかし、統合後も新規顧客の獲得が思うように進まず、収入の減少が続いたため、資金繰りの改善には至りませんでした。

2024年12月

破産手続き開始決定

そして2024年12月10日、医療法人社団美実会と一般社団法人八桜会が東京地方裁判所に自己破産を申請し、破産手続き開始決定を受けました。債権者数は約9万1800人、負債総額は約124億7133万円と報告されています。

まとめ:アリシアクリニックは事業のピークのわずか3年後に破産している

以上、アリシアクリニックの歴史をまとめると以下の通りです。

アリシアクリニックは2021年に売上でも163億円を達成して事業のピークを迎え、新ブランド「じぶんクリニック」を展開して多角化を進めたものの、そのわずか3年後に破産手続きを開始するに至っているのです。このように脱毛業界においては、最新の情報・状況にキャッチアップしていなければ消費者として非常に危険であることがわかります。

出来事
2010年1月・医療法人社団美実会が創業し、同年9月に法人化、が後に「アリシアクリニック」を展開する基盤となる
2011年7月・医療法人社団美実会は、医療脱毛専門の「アリシアクリニック」を開業し、積極的な出店を開始
2016年・神田沙也加さんをイメージキャラクターに起用、積極的な広告投資へ
2019年・女優の平祐奈さんをイメージキャラクターに起用、テレビCMや首都圏の電車内広告など多岐にわたる広告展開
2021年・女優の見上愛さんをイメージキャラクターに起用
・年間収入約163億1500万円を達成し事業のピークへ
2021年7月・一般社団法人八桜会を設立し、若年層ターゲットの「じぶんクリニック」を立ち上げて多角化を目指す
2023年11月・親会社からの離脱、直後の12月には銀座カラーを運営する親会社が破産手続き開始
2024年1月・「じぶんクリニック」の屋号を「アリシアクリニック」に変更、ブランド統合による経営再建を模索
2024年12月・破産手続き開始決定
アリシアクリニックの経緯

アリシアクリニックの倒産騒動の理由と原因

こうしたアリシアクリニックの倒産騒動は非常に示唆に溢れており、脱毛サロンを選ぶ際にも大きな参考になります。倒産騒動の理由について、私は以下のように分析しています。

アリシアクリニックの倒産騒動の理由
  1. 自転車操業的なビジネスモデル
  2. 広告による売上増を当てにした規模拡大、経営リソースの分散
  3. 業界内競争の激化と市場環境の変化

自転車操業的なビジネスモデル

まず1つ目は「自転車操業的なビジネスモデル」です。

アリシアクリニックは、顧客からの前払い金を事業拡大の資金として活用するビジネスモデルを採用していました。このモデルでは、新規顧客の前払い金をもとに店舗の運営や新規出店を行うため、常に新たな顧客を獲得し続ける必要があります。

しかし、新規顧客の獲得が滞ると資金繰りが厳しくなり、いわゆる「自転車操業」の状態に陥ります。アリシアクリニックはこの仕組みが破綻し、最終的に倒産に追い込まれました。後述しますが、自転車操業の状態にあっただろうに関わらず、広告投資で上がった売上を当てに無理に規模拡大を図ったことも打ち手として大きな失敗だったと推察されます。

一方で、脱毛サービスでは高額な前払金が発生するため、その売上計上を見て「事業が順調だ!」と思い込みたくなるのが人間の性、こうした点も脱毛ビジネスで経営者が勘違いして経営難に陥る構造的な問題だと考えています。

これはスタートアップ企業でもよく起こる、典型的な失敗例の1つです(英会話教室のNOVAも同様の理由で経営破綻しています)。

顧客からの前払金を事業資金にするビジネスモデルには堅実さが求められる

広告による売上増を当てにした規模拡大、経営リソースの分散

2つ目は「広告による売上増を当てにした規模拡大、経営リソースの分散」です。

アリシアクリニックは、2016年の神田沙也加さんの初のイメージキャラクター起用に始まり、2019年には平祐奈さん、2021年には見上愛さんを起用してテレビCMや広告展開を行っていました。結果として、2021年4月期に、年間収入約163億1500万円を達成し事業のピークを迎えました。

おそらくはこれを受けて事業が順調に成長していると判断したのでしょう、2021年7月、アリシアクリニックは関連法人として一般社団法人八桜会を設立、「じぶんクリニック」の運営を開始してさらなる規模拡大を図りました。「じぶんクリニック」は、比較的リーズナブルな価格設定やシンプルな施術プランを提供することで、若年層や初めて医療脱毛を受ける顧客をターゲットとしていたのです。

しかし、新ブランドの立ち上げと積極的な出店に伴う広告宣伝費や人件費などの固定費が増大し、経営を圧迫する結果となりました。さらに、2024年7月には「じぶんクリニック」を「アリシアクリニック」へ統合し、ブランドを一本化することで経営効率の向上を図りましたが、統合後も新規顧客の獲得が思うように進まず、収入の減少が続いたため、資金繰りの改善には至りませんでした。

そもそも、2021年4月期には過去最高の年間収入163億1500万円を得ていましたが、これを得るために投資した広告費用や出店費用はその時点で回収できていたのでしょうか?私は、広告効果で短期的に伸びた数字を当てにして事業が順調だと誤認してしまった可能性が非常に高く、実態は広告投資を辞めた瞬間に売上が下がるような状況だったと推察しています。

そのように本質的には事業が伸びきっていない状況の中、新ブランドの「じぶんクリニック」を立ち上げたことは、単純にその分の出店費用や広告費用がアリシアクリニックと別に必要になり、経営リソースが分散することを意味します。

特に脱毛業界では、派手な広告投資、最高益、新ブランドなどのポジティブなニュースに注意

業界内競争の激化と市場環境の変化

そして3つ目は、「業界内競争の激化と市場環境の変化」です。

近年、美容業界全体の注目度の高まりとともに、脱毛サロンへの新規参入が増加しました。これにより、各サロン間での価格競争が激化し、利益率の低下を招きました。特に、脱毛サービスは各社のサービスに大きな差がつきにくいため、価格で勝負することになり、新規顧客の獲得が困難になると売上が下がり、サロン経営が悪化するという悪循環に陥ったと考えられます。

さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの人々が外出を控えるようになり、対面サービスを提供する店舗は集客が著しく減少しました。その結果、固定費や従業員の給与の支払いが継続する中で、収益が大幅に減少し、経営が厳しい状態に陥りました。またセルフエステや家庭用脱毛器の性能向上など、脱毛方法が多様化しているため、顧客の選択肢が広がり、従来のサロン型サービスの需要も減少したと考えられます。

これらの要因が重なり、アリシアクリニックの経営はさらに厳しいものとなりました。競争の激化、顧客ニーズの変化、そして外部環境の変動が、同社の経営基盤を揺るがす結果となったのです。

2016年の神田沙也加さんのCMのイメージが残っている方は「あのアリシアクリニック」と信頼してしまったかもしれませんが、コロナや競合参入を経て状況は大きく変わっていました。過去のイメージや思い込みを捨てて、最新の情報をキャッチアップして現在の状況をしっかり確認するようにしなければいけません。

参入障壁が低い市場でビジネスを続けるのは容易ではない、最新の情報にキャッチアップするべし

アリシアクリニックの倒産騒動で返金はされた?

アリシアクリニックの倒産騒動に際し、顧客が支払った料金の返金対応について気になる方も多いと思います。

結論から申し上げますと、現金やクレジットカードで全額を支払済みの場合、未施術分の返金は極めて困難な状況です。破産管財人からの公式発表によれば、未施術分の施術代金は破産債権として取り扱われますが、現時点で配当の見込みはなく、返金は極めて難しいとされています。

一方、クレジットカードやローンで分割払いを利用されている場合、未施術分に対応する代金については、クレジットカード会社や信販会社に対し、支払いの停止を求めることができる可能性があります。ただし、これらの手続きは自動的に行われるものではないため、ご自身で契約先の会社に直接連絡し、支払停止の抗弁権を主張する必要があります。

過去の事例として、ミュゼプラチナムの倒産騒動時には、事業譲渡が行われたため、返金手続きは継続して行われていました。しかし、アリシアクリニックの場合、現時点で事業譲渡の情報はなく、返金が難しい状況です。

このような事態を避けるためにも、契約前に返金制度や支払い方法を十分に確認し、信頼できるサロンを選ぶことが重要です。また、万が一のリスクに備え、クレジットカードの分割払いなど、支払い方法にも工夫を凝らすことをお勧めします。

通っている脱毛サロンが倒産したときに返金ができるか、支払い停止ができるかなどの対応についてはこちらの記事で解説しているので、脱毛を検討している方はぜひみていただけたらと思っています。

倒産の危険がある脱毛サロン・クリニックは絶対に選んではいけない!

このように、万が一通っている脱毛サロンが潰れる・破産する・倒産するようなことがあった場合には、返金もされず、サービスも受けられないことが一般的です。

過去にはエタラビや脱毛ラボが倒産した際には、弁護士を通じて集団訴訟を検討する方もいたようですが、そもそもその手間暇は果てしなく、結局は泣き寝入りになってしまうことが多いはずです。

そのため、私は脱毛を検討している方には「倒産や破産のリスクがないサロンやクリニックを選ぶこと」を他のどんなことよりも大切にしてほしいと考えています。これは実際に世の中で起こった事実なのです。

【筆者おすすめ】最も信頼できるSBCメディカルグループとは?

SBCメディカルグループは、2023年にゴリラクリニックを買収した名実ともに国内最大規模の美容医療法人です。そしてグループ各クリニックの中でも、SBCメディカルグループの本体・湘南美容クリニック業界最大級の規模を誇ります。

SBCメディカルグループの特徴
  • 全国120院以上を展開する大手グループ
  • 年間来院数は500万人超(国内最大規模)
  • 多角的な事業展開(美容医療のほか、AGA治療・歯科・婦人科など)
  • 大手ゆえに資金力があり、倒産リスクが低い

実際、2024年末のアリシアクリニック破産のように、中堅の脱毛クリニックでも経営が立ち行かなくなるケースはあり得ます。一方、巨大資本を背景に全国展開しているクリニックは、仮に一部院が赤字になってもグループ全体でリスクを吸収できる体制が整っていることが多いです。

「絶対に潰れない」クリニックは存在しないものの、SBCメディカルグループは業界内でもトップクラスの経営規模を誇るため、経営破綻リスクをより小さくしたい方におすすめです。

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まとめ

アリシアクリニックの破産騒動について、その理由や原因を説明させていただきました。

こうしてビジネス的な側面から見てみると、「事業譲渡を繰り返している脱毛サロンは選ばない方が良い」など新しい側面が見えてくるのではないでしょうか。他のポイントも含めて脱毛を検討している方に向けた選び方や基準はこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください!

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