Amazonギフトカード贈呈のICL手術アンケート実施中

マウスピース矯正・クリアコレクトとストローマングループの企業分析、今後の将来性予測も

私は、どんな物事に取り組む際も、その物事に関する分析・考察を行い、判断の基準や選び方の仮説を構築します。それによって、その物事について根拠を持って判断・選択できると考えているからです。

それは2021年に受けた歯科矯正についても例外ではなく、歯科矯正そのものの業界や市場、その中のプレイヤーについても分析を行いました。

マウスピース歯科矯正の2番手・クリアコレクトを提供するストローマングループの企業分析、今後の将来性予測を紹介したいと思います。

※ステマ規制への対応方針:当サイトの運営にあたっては、実体験を元に公平性/客観性を心掛け、読者の皆様を第一に取り組んでいます。商品提供や広告依頼を受け、広告/PRの内容が含まれることもありますが、コンテンツの基準や判断軸には一切関与させておりません。

クリアコレクトの概要

クリアコレクトは、スイス証券取引所に上場しているストローマングループ(Straumann Holding AG)が展開する通院型マウスピース矯正ブランドです。

ストローマングループはデンタルインプラントメーカーとして世界シェアNo.1の実績を誇るグローバル企業で、マウスピース矯正市場でもインビザラインについでアメリカ2位のマーケットシェアを持っています。

クリアコレクトのサービス内容

クリアコレクトのサービス内容としては、以下のようにドクターから提供されたデータをもとにクリアコレクトが治療計画の立案やマウスピース設計を行い、それを元にしてドクターが治療を行っていく形になります。

クリアコレクトのマウスピース矯正の流れ
  1. 診察・歯型のスキャン:他社のスキャン装置を用いてドクターが実施
  2. 治療計画立案:ドクターから提供されたデータを元に専用ソフトウェアを用いてクリアコレクトが実施
  3. マウスピース設計:ドクターから提供されたデータを元に専用ソフトウェアを用いてクリアコレクトが実施
  4. マウスピース製造:クリアコレクトが製造
  5. マウスピースを用いた治療:ドクターが実施

クリアコレクトのドクター用製品カタログを参照して作成

業界一位で競合に位置づけられるインビザラインは「診察・歯型のスキャン」「治療計画立案」「マウスピース設計」についてもドクターが使う専用装置やソフトウェアを提供しています。そのため初期費用が大きくなると考えられるため、歯科医側としてはクリアコレクトは初期導入コストが小さいというメリットがあり、それを強みにしていると推察されます。

クリアコレクトの沿革・歴史

クリアコレクトの歴史としては、ストローマングループの歴史とクリアコレクトの歴史を分けて説明する必要があります。結論から言うと、クリアコレクトは2017年にストローマングループに買収されてグループの事業になったからです。

沿革
1954年Reinhard StraumannによりDr.Ing. R.Straumann Research Institute AGとしてドイツで創業
1998年Straumanグループがスイス証券取引所に上場して株式を公開
2006年アメリカの歯科医師・Willis Pumphreyと歯科技工士・Paul Dinhによってクリアコレクトが開発
2009年マウスピース矯正の特許を保有していたインビザラインの特許を侵害していない旨の確認訴訟を提訴、泥沼化。
2017年クリアコレクトがStraumanグループによって買収
2018年日本でクリアコレクトによる歯科矯正サービスが提供開始
2019年インビザラインとクリアコレクトの間で和解が実施
クリアコレクトを提供するStraumann Holding AG(ストローマン)の歴史・沿革

ストローマングループの歴史

ストローマングループの創設者・Reinhard Straumann氏は元々スキージャンプ競技者で競技中のケガから骨の構造や加齢に伴う変化に興味を持ち、インプラント治療事業を始めたという経緯があります。

そのため当初は歯科に関する事業ではなく、骨の接合術用のインプラントを開発していましたが、1960年代から大学病院と提携して、歯科用インプラントの研究・開発を請け負ったことが現在の事業の始まりになっています。

クリアコレクトの歴史

そしてクリアコレクトは、ストローマングループとは全く関係なく2006年にアメリカで誕生します。アメリカの歯科医師・Willis Pumphreyと歯科技工士・Paul Dinhがクリアコレクトを開発したのです。

クリアコレクトは、当時マウスピース矯正に関する特許を保有していたインビザラインに対しても、特許を侵害していないことを示す確認訴訟を行い、インビザライン一強だったマウスピース矯正業界に新しい風を吹かせます。

しかしインビザラインがクリアコレクトを特許侵害によって提訴し、国際的な特許紛争にもつれ込んで泥沼化したのです。

ストローマングループによる買収、そしてインビザラインとの和解

そして2017年には、クリアコレクトはストローマングループによって買収され、グループの事業となります。

そして特許紛争を繰り広げていたインビザラインとは、3,500万ドルもの和解金の支払いや5年間の業務提携を条件として2019年に和解を迎えることとなりました。しかしストローマングループは追加で1,600万ドルを支払うことで業務提携を破棄してしまい、これによってクリアコレクトとインビザラインが完全な競合関係になることが決定して今に至ります。

インビザラインは、業務提携が破棄された2019年の6月17日の翌日の株価が5%近くも下落してしまいました。

クリアコレクトのビジネスモデル

クリアコレクトのビジネスモデルを図解すると以下の通りです(あくまで筆者が分析したものです)。

歯医者がスキャン装置などを用いて患者の歯形を取り、そのスキャンデータや写真をクリアコレクトに送ると、治療計画やマウスピースをクリアコレクトが提供してくれると言うものです。そして歯医者から支払われる利用料金がクリアコレクトの売上になります。

インビザラインがスキャン装置などを含めてあらゆる器具やソフトウェアをワンストップで提供しているのに対し、クリアコレクトはおそらく初期コストが小さいというメリットがあると考えています。そのため利用料金も小さい、ひょっとすると利用者が発生しないと収益も発生しないリベニューシェアですらあるのではないかとも思います。

インビザラインの運営会社・Align Technologyは歯科矯正事業が中核事業ですが、運営のストローマングループはインプラント事業など他の事業も含めて事業ポートフォリオを組めていることも事業に影響を与えていると思います。

クリアコレクトの強み・独自性

クリアコレクトの強み・独自性としては以下が挙げられると考えています。

クリアコレクトの強み・独自性
  1. インビザラインよりも安い利用料金で導入可能と考えらえる
  2. マウスピース矯正以外も含めた事業ポートフォリオが組めている
  3. インプラント事業も含めた歯医者とのネットワーク

1つずつ説明していきましょう。

インビザラインよりも安い料金で導入可能と考えらえる

まずクリアコレクトの強み・独自性の1つ目は、インビザラインよりも安い利用料金で導入可能と考えらえる点です。前述したように、クリアコレクトのマウスピース矯正は自社スキャン装置でなくても導入可能です。そのため普通に考えると、ワンストップであらゆる器具やソフトウェアを提供しているインビザラインよりも安い料金で導入可能であろうはずです。

スキャナーはSTLと呼ばれる立体画像データの保存形式に対応しているスキャナであれば対応可とのことなので、ひょっとするとインビザラインのスキャン装置を用いても導入可能かもしれないと推察されます。それであれば、インビザラインから利用料金が安いクリアコレクトにスイッチングする歯医者は増えるのではないでしょうか。

マウスピース矯正以外も含めた事業ポートフォリオが組めている

クリアコレクトの強み・独自性の2つ目は、マウスピース矯正以外も含めて事業ポートフォリオが組めていることです。クリアコレクトは世界シェアNo1のインプラント事業を持つストローマングループに買収された経緯から、ストローマングループの事業はマウスピース矯正事業だけではありません。

一方でクリアコレクトの運営会社・Align Technologyはマウスピース矯正が中核事業のため、マウスピース矯正事業が低成長になると会社の成長が止まってしまいます。実際に最近はマイナス成長にすらなっているため、どうしても経営は短期目線にならざるを得ず、それが中長期的に事業に悪影響をもたらす可能性は十分あると考えています(料金の値上げなど)。

インプラント事業も含めた歯医者とのネットワーク

クリアコレクトの強み・独自性の3つ目は、インプラント事業も含めた歯医者とのネットワークがあることです。上述したようにクリアコレクトの運営会社・ストローマングループは世界No1シェアのインプラント事業を営んでいます。そのためインプラントを基にして世界中の歯医者とネットワークがあるであろうため、そのネットワークを活用してマウスピース矯正も迅速に導入ができているのではないでしょうか。

ビジネス的には、こうした顧客との関係はネットワーク、またはチャネルという言葉で表されます。

クリアコレクトの弱み・脅威

一方で、クリアコレクトの弱みとしては以下が挙げられると考えています。

クリアコレクトの弱み・脅威
  1. マウスピースの精密性
  2. 新しい矯正のあり方(オンライン型マウスピース矯正)の登場

1つずつ説明していきましょう。

マウスピースの精密性

まずクリアコレクトの弱み・脅威の1つ目は、マウスピースの緻密性です。クリアコレクトはドクター顔や歯の写真、レントゲン撮影、デジタルスキャンや歯型を採って、これらのデータを提出することでマウスピースの製作を行います。

そして矯正が進むと歯型を取って模型を技工所へ送り、新しいマウスピースを製造することを繰り返します。こうして歯の動きを確認しながら治療を進めてゆくのです。つまりあくまで歯形の模型に基づいてマウスピースが製造されるのです。

対してインビザラインでは、自社のスキャン器具によってスキャンされた歯の構造が、3Dシミュレーションソフトによって再現されます。その内容がCAD/CAMを用いた光造形技術によって、アライナー(マウスピース)に正確に再現されるのです。

結果としてマウスピースの緻密性ではインビザラインに軍配が上がり、クリアライナーは前歯だけを動かす部分矯正に使用されることが多いようです。

新しい矯正のあり方(オンライン型マウスピース矯正)の登場

クリアコレクトの弱み・脅威の2つ目は、オンライン型マウスピース矯正が登場していることです。

オンライン型マウスピース矯正とは、来院不要、又は初回のみの来院で、LINEアプリなどを通じて矯正の進捗管理やサポート、相談受付を行うマウスピース矯正です。海外では上場もしている「Smile Direct Club」、日本では「Oh my teeth」「hanaravi」などのスタートアップ企業が続々と参入しています。

オンライン型マウスピース事業のビジネスモデル

事業者側としてはドクターの稼働が低くなって費用を抑えられ、利用者としては来院の手間が不要で低価格でマウスピース矯正が受けられるという、双方にメリットがあるモデルです。こうした新規参入にどう対応するかは間違いなく経営のいちイシューになっていることでしょう。

クリアコレクトの今後・将来性予測

クリアコレクトの今後・将来性予測
  1. クリアコレクトが対象とする歯科矯正の市場規模は拡大
  2. インビザラインのシェアを切り崩すことで堅調な成長が見込める

クリアコレクトが対象とする歯科矯正の市場規模は拡大

まず市場全体について、クリアコレクトが対象とする歯科矯正の市場規模は拡大すると考えています。

人々の美容意識の増加、経済成長および歯科矯正の低下価格化によるターゲット層の拡大が主な理由です。特にグローバルに事業を展開するクリアコレクトにとっては、発展途上国の経済成長によって歯科矯正が広まり市場の裾野がゆっくりと、しかし確実に拡大することが予測されます。

インビザラインのシェアを切り崩すことで堅調な成長が見込める

市場全体は緩やかに拡大すると見込まれる中で、クリアコレクト自体の業績はどのように予測されるでしょうか。

残念ながらセグメント別の業績は出ていませんでしたが、ファクトとしてマイナス成長を迎えているインビザラインと比べ、ストローマングループは成長率こそ下がって入るものの、10〜20%の高い成長率を維持しています。

これはほぼ市場を独占していたインビザラインと比べ、その市場を奪えば良いクリアコレクトの立場の違いでしょう。

そしてストローマングループの市場シェアとして、クリアコレクトは下記のうち「Clear Aligners」が該当するかと思いますが、現状の市場シェアはまだ5%。まだまだ成長の余地は残されていると考えられます。

そのため、急激に成長する可能性は低いとは思いますが、中長期で見ると堅調に成長を続けるのではないかと考えています。

まとめ

以上、クリアコレクト、そして運営会社のストローマングループについて企業分析をさせていただきました。

歯科矯正を検討している方だけでなく、何事も分析・考察することの面白みが伝わっていたら嬉しいです!

error: Content is protected !!