東大を卒業後、戦略コンサル・VCで勤務していた「チルbot」です!
脱毛は老若男女問わず急速に広まっており、脱毛サロンやクリニックを検討している方も多いと思います。
しかし実は脱毛サロンやクリニックは倒産して潰れる、事業が上手くいかず撤退・閉店するケースが非常に多く、そうした場合は返金や脱毛サービスが受けられないという最悪のリスクも発生してしまうのです。
実は、国内最大の169店舗を展開する(2022年3月末時点)美容脱毛サロン・ミュゼプラチナムもかつて倒産騒動や経営難を報じられたことがあったのです。ビジネスの目から見てわかるミュゼを取り巻く暗雲とは一体何なのでしょうか?非常に示唆に溢れており、脱毛を考えている方であれば絶対に知っておいて損はないと断言します。
ミュゼプラチナムの倒産騒動・経営難の真相、ミュゼは本当に信頼できるのかどうか、脱毛サロンのビジネスモデルや危険性なども含めて徹底解説したいと思います。
ミュゼプラチナムの倒産騒動が起こった理由
全国最大店舗数を誇る女性用脱毛サロン、ミュゼプラチナムは2015年に破産騒動が起こり、2016年・2020年と2回も事業譲渡を経た上で今もサービス運営を行なっています。
そんなミュゼプラチナムの倒産騒動が起こった理由は以下の通りだと推察しています。
- 急拡大の実態は爆弾を抱える自転車操業
- 経営者の露出増加は悪いシグナル
- 2回の事業譲渡から分かる黒字化の難しさ
簡潔には以上終了なのですが、今回の記事の目的は「皆さんが脱毛サロンやクリニックを選ぶときに身を守れるようになってもらうこと」です。そして、ミュゼでの脱毛には慎重になって方がいいと言うのが私の意見です。
自分ごととして理解を深めるために、脱毛サロンの倒産や閉店について詳しく説明したいと思います。
脱毛を含むエステティック業の倒産や閉店は多い
実は脱毛サロンやクリニックの倒産や、倒産まで至らずとも閉店・閉業は非常に多いです。
脱毛クリニック・サロンの倒産は増えている
2019年に東京商工リサーチが実施した「2019年エステティック業倒産動向調査」によると、脱毛サロン・クリニックを含んだのエステティック業の倒産は、2019年に73件で過去最多となったそうです。
負債総額は29億2,200万円でしたが、その内訳としては負債1億円以上の大規模なもの5件、そして負債1億円未満の比較的小規模なものが68件で全体の9割以上となっており、小規模な個人サロンの倒産が進んでいることがわかります。
エステティックサロンは参入障壁が低く、個人経営の個人サロンが増えていますが、施術内容の差別化ができないため顧客獲得が難しく、顧客獲得に費やす広告費などがかさんで倒産してしまうパターンが増えているのです。
脱毛クリニック・サロンの撤退・閉店も増えている
そして倒産まで至らずとも、事業がうまくいかずに撤退・閉店してしまうケースも増えています。
特に最近では、元NEWSの手越祐也さんがプロデュースする「TEGOSHI BEAUTY SALON」だけでなく、俳優の新田真剣佑さんがプロデュースする「AmSALON」など、有名人・芸能人の人気や知名度を武器にした脱毛サロンやクリニックが増えていますが、軒並み撤退に追い込まれているのです。
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴
なぜ脱毛サロンやクリニックの倒産や撤退が相次いでいるのでしょうか?
まずはその前提として、脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴を説明したいと思います。
- 広告費を中心とした費用が先出する
- キャッシュは中長期的に回収する
- 黒字化まで時間がかかり中長期的な経営が必要
それでは順番に解説していきたいと思います。
広告費を中心とした費用が先出する
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴の1つ目は、「広告費を中心とした費用が先出する」というものです。
脱毛サロン・クリニックの運営に必要な費用としては主に以下のようなものがありますが、このうち大きな割合を占め、かつ重要度が高いものが「広告費」です。
- 広告費
- 店舗賃料
- リース料(脱毛機器をリースしている場合)、または減価償却費(脱毛機器を購入した場合)
- 人件費
脱毛サロン・クリニックを開業しただけでは当然お客さんは来てくれないので、広告やプロモーション、キャンペーンで認知を広げ、来客を促進する必要があります。こうした活動全般にかかる費用が広告費です。
そして、広告費を用いた活動の結果、お客さんが来店・契約をしてくれないと収益は発生しません。そのため収益を得るよりも先に広告費や店舗賃料、リース料、人件費などの費用が必要となり、お客さんが来るまで永遠にその費用を支払続けなければいけなくなります。
キャッシュは中長期的に回収する
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴の2つ目は、「キャッシュ(現金)は中長期的に回収」というものです。
種類にもよりますが、脱毛には10万円以上の費用が必要となります。多くの人にとっては高額に感じられるでしょう。
光脱毛 (美容脱毛) | ニードル脱毛 (電気脱毛) | レーザー脱毛 | |
---|---|---|---|
処置 | 光で毛根にダメージを与える | 針を刺し電流で一本ずつ処理 | レーザー光で毛根を破壊する |
特徴 | 2000年代に登場した 最も新しい脱毛方法。 近年でも新しい手法が登場。 | 150年近い歴史を持つ脱毛方法で、 ダンディハウス・メンズTBCなど 歴史あるクリニックが主流 | 1980年代に登場した 比較的新しい脱毛方法。 費用は高額でお試しはない |
自己処理を減らすために 必要な通院数と費用 | 8〜10回 (8〜10万円) | 5〜6回 (15〜20万円) | 5〜6回 (7〜9万円) |
ツルツルにするために 必要な通院数と費用 | 〜25回 (20-22万円) | 〜15回 (25-35万円) | 〜13回 (13-18万円) |
そのため多くの脱毛サロン・クリニックは分割払いに対応しており、月々数千円から脱毛を受けられるプランも用意しています(4年間で48回分割払いものプランも多いです)。つまり脱毛サロン・クリニックは一度にまとまったお金を支払ってもらえる場合ばかりではなく、分割された金額を少しずつ回収していくような場合も多いということです。
例えば現金支払いのラーメン屋であれば、ラーメンを提供した瞬間に収益が発生して現金を回収することができますが、脱毛サロンの場合はゆっくり時間をかけて現金を回収しなければいけないのです(※ファクタリングサービスなどを使っている事業者も多いとは思いますが、いずれにせよキャッシュフローを圧迫することには変わりません)。
黒字化まで時間がかかり中長期的な経営が必要
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴の3つ目は、「黒字化まで時間がかかる」というものです。
上述したように、脱毛サロン・クリニックにはお客さんを呼ぶための費用が先に必要となり、その結果お客さんが脱毛サービスに契約してくれてもすぐに全額を回収できるわけではなく、現金を少しずつ回収していく形になります。
そのため、広告が成功してお客さんを呼び込めたからと言ってすぐにその利益が発生するわけではなく、中長期的に時間をかけて利益を回収していくようなモデルになるのです。結果として、中長期目線でのシミュレーションを組んで、売上や利益など目先の誘惑に負けずにコツコツと経営をしていく必要があると考えられます。
後述しますが、こうした中長期的な経営ができず、誘惑に負けて出店やプロモーションを急ぎ、キャッシュフローを圧迫してしまうことが脱毛サロン・クリニックの倒産の主な理由だと考えられます。
脱毛サロン・クリニックのリスク・危険性
脱毛サロン・クリニックのビジネスモデルの特徴を踏まえ、倒産や撤退に直結するその中に潜んだリスクや危険性を説明したいと思います。
- 競争環境の激化
- 顧客の取り合いによる低価格競争、広告費の高騰
- 短期目線の経営によるキャッシュフローの圧迫
こちらも順番に解説していきたいと思います。
競争環境の激化
脱毛サロン・クリニックのリスクの1つ目は「競争環境が激化していること」です。
最近では、ローランドさんなど有名人・芸能人が脱毛サロンのプロデュースを始めたりと、脱毛業界への新規参入が増えています。Youtubeなどで脱毛サロンの広告やキャンペーンを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
当然その結果成功するかは別問題なのですが、以下のような理由から脱毛業界は参入障壁が比較的低いのです。
- 在庫不要で低リスク
- 人材育成が容易
- 多数乱戦の業界構造
- 脱毛器具・機械の低価格化
そして参入障壁が低いということは、参入する事業者が増える、つまり競合・ライバルが増えやすいということです。
脱毛に対するニーズは増えているものの、当然脱毛サロンやクリニックの数が増えれば、そのニーズを抱えているお客さんの取り合いになります。脱毛業界は、競合が多いレッドオーシャンの厳しい競争環境になりつつあるのです。
顧客の取り合いによる低価格競争、広告費の高騰
脱毛サロン・クリニックのリスクの2つ目は「顧客の取り合いにより低価格競争や広告費の高騰が進んでいること」です。
脱毛業界の競争環境が激化しているということは伝えさせていただきましたが、そうした環境で脱毛サロンやクリニックはどうすれば良いのでしょうか?他よりも安くサービスを提供したり、大々的な広告やキャンペーンを実施して、自分達のサロンやクリニックに目をつけてもらうようにしなければいけません。
当然低価格化は収益を圧迫しますし、様々なサロンやクリニックが広告の希望を出すと、広告費が高騰するだけでなく、広告のパフォーマンス・効果も悪化してしまうはずです。
短期目線の経営によるキャッシュフローの圧迫
脱毛サロン・クリニックのリスクの3つ目は「短期目線の経営によりキャッシュフローを圧迫してしまうこと」です。
解説した通り、脱毛サロン・クリニックは黒字化まで時間がかかるため中長期的な経営が必要です。お客さんが来てくれているからと言ってキャッシュをすぐに回収できるわけではなく、すぐに利益が出るわけでもありません。
しかし調子が良く見えると成功を急いでしまうのが人間の性です。
「もっと広告費を掛ければもっとお客さんが来てくれるのではないか」
「店舗を出店すればさらに規模拡大できるのではないか」
「ライバルが出てくる前にもっと投資をして絶対的なポジションを築くべきではないか」
こうした悪魔の囁きに負けてしまい、広告費の増加や急速な出店など規模拡大へと向かってしまいます。そしてそのための追加費用が短期的に必要になるものの、上手くいかずに収益やキャッシュを回収できず債務超過に陥ってしまうのです。これは脱毛サロンやクリニックだけでなく、あらゆるビジネスに共通する典型的な失敗パターンです。
そしてこうした誘惑はうまく行っている時に来るからこそ冷静な判断ができなくなってしまいます。「これだけお客さんが来ているのだから、広告費や店舗数を増やせばもっとうまくいくだろう」と考えてしまいがちなのです。
そのため私は、脱毛サロンやクリニックはきらびやかに見えますが、質実剛健な経営者の方が成功すると考えています。
ミュゼプラチナムの倒産騒動について
こうしたリスクや危険性から閉店・撤退に至ってしまった脱毛サロン・クリニックはいくつかありますが、そのうち代表的なものの1つは、最も著名な脱毛サロンの1つ・ミュゼプラチナムの倒産騒動です。
ミュゼプラチナムとは
「ミュゼプラチナム」は福島県発で全国展開する女性専門の美容脱毛サロンです。
トリンドル玲奈さん、池田エライザさん、宇垣美里さんなど著名なタレントをイメージキャラクターに起用し、2022年からは若手のモデルや女優として活躍する横田真悠さん、久間田琳加を起用してCMやプロモーションを行っています。皆さんも「ミュゼ」の名前は一度は聞いたり目にしたことはあるのではないでしょうか。
ミュゼプラチナムの倒産騒動の経緯
そんなミュゼプラチナムの倒産騒動については、事業譲渡や子会社化などビジネス的な観点が深く関わっています。わかりやすく図解するとともに、年表でまとめてみたので、読み物を読む感覚でご覧いただけたらと思っています。
2003年:ジンコーポレーションの事業としてスタート
それではまずはミュゼプラチナムの誕生から見ていきましょう。2002年6月、有限会社ジンコーポレーションが設立され、翌年の2003年7月に美容脱毛専門サロン・ミュゼプラチナムの1号店がオープンし、ミュゼの歴史は始まりました。
その後順調に成長を続け、2010年12月には100店舗を突破し、会員数も51万人を突破します。
2011年:トリンドル玲奈のCMで急成長、のはずだった
そして2011年には女優のトリンドル玲奈さんを起用し、テレビCM、電車内広告など大々的なキャンペーンを行います。これによって更なる成長を見せ、全国約190店舗、会員数270万人、2014年の売上高は386億円にまで拡大します。
ジンコーポレーションの社長・高橋仁氏は2010年には「すべては女性のキレイのために」という書籍も出版し、2011年には競馬の馬主にもなり「ミュゼエイリアン」「ミュゼスルタン」など10数頭のオーナーになっていました。
2013年〜:予約が取れないことによる批判・解約が相次ぐ
こうしたキャンペーンや経営者の露出も相まって、ミュゼには予約が殺到します。しかしその増えた予約を受け切れるだけの店舗数やスタッフが整っておらず、「ミュゼは予約ができない」という批判や苦情が相次いでしまったのです。
これは新規顧客だけでなく、すでに契約した既存顧客も同じでした。「お金を払ったのに予約ができないなら解約しよう」と解約希望者が殺到したのです。2014年の1月には3,000件台だった解約数は、6月には7,000件にまで膨らんでいました。
2015年4月〜:多額の未払い金により水面化で電通とトラブルに
こうした状況ではあったものの、冠スポンサーとしてゴルフトーナメント「ミュゼプラチナム」を主催するなど大盤振る舞いは続いていたようです。しかしこうした解約が原因で、ジンコーポレーションはなんとあの大手広告代理店・電通に対してトラブルを起こしてしまっていたことが後ほど明らかになりました。
2015年の4月末に支払うはずだった残債7億円を5月末へ、5月末の13億円を6月へと立て続けに繰り越したものの、6月末の残債16億円のうち4億円しか支払うことができなかったのです。そして7月末の残債は24億円にものぼり、電通の経営陣が早期返済と取引停止を通告する事態にも発展してしまったのです。
広告費をかけて顧客を獲得し、顧客から得たお金で広告を打つという自転車操業が完全に逆流してしまったのでしょう。
2015年:経営難が明るみに
そんな中で、新潮社の情報サイト「フォーサイト」でミュゼに関する記事が掲載されました。
- 「医師法違反」の声もある「脱毛エステ」疑惑の商法(5月21日)
- 「脱毛エステ最大手」に浮上した「経営危機説」「健康被害隠蔽」(6月19日)
ミュゼの内部情報から、解約数の増加による返金の先延ばし、さらにはボーナスの見送りや社員旅行の中止、経営難を疑われる問題が指摘されたのです。そして8月25日には「脱毛エステ最大手」ついに「経営破たん」: 刑事事件に発展も」という記事が掲載され、Yahoo!ニュースなどのネットニュースを経由して拡散し、経営難が明らかになりました。
2015年9月には代表の高橋仁さんが所有する競走馬のほとんどが名義変更されていることも発覚しました。5月にはミュゼエイリアン・ミュゼスルタンが日本ダービーに出走し、馬主資格取得からわずか4年で日本ダービー出走が話題になっていただけに、世の中の栄枯盛衰・諸行無常を感じます。
そして2015年10月、ジンコーポレーションは資金繰りの悪化によって借金の返済が滞り、主要な取引銀行との間で任意整理の協議に入ったことを明らかにしたのです。
2016年1月:事業譲渡を経て、株式会社RVH傘下へ
経営難を受けて、ジンコーポレーションは2015年11月、グラフィックボードの製造やゲーム開発などを手掛ける株式会社RVHによる支援を受けることを発表します。そしてミュゼは、まずはジンコーポレーションの子会社・株式会社ミュゼプラチナムへ事業譲渡され、続いて株式会社ミュゼプラチナムがRVHの子会社になることで、ミュゼはRVHの事業になったのです。
2017年3月:エタラビ・ミスプレミアムから事業譲渡
物語はまだまだ終わりません。株式会社RVH傘下の事業になったミュゼプラチナムですが、2017年には脱毛エステサロン「エターナルラビリンス」「ミスプレミアム」を運営していたグロワール・ブリエ東京が経営難に陥ったことを受け、店舗などの資産や事業の譲渡を受けることとなります。
そしてその後、グロワール・ブリエ東京は破産手続きを開始。事業譲渡によって経営難を免れたミュゼプラチナムは、同じく経営難に陥っていたエターナルラビリンス・ミスプレミアムを統合する形になったのです。エタラビの倒産についてはこちらの記事で詳しく解説しているのでよかったらご覧ください。
またRVHは2017年の2月には、「たかの友梨ビューティクリニック」の運営会社であり、たかの友梨氏が代表を務める不二ビューティーを100%子会社化し、ミュゼ、たかの友梨ビューティクリニックの2つの脱毛ブランドを保有します。
2020年2月:事業譲渡により株式会社G.Pホールディング傘下へ
しかし、これでも物語は終わりませんでした。2020年2月、RVHがミュゼプラチナムと不二ビューティーの2社をたかの友梨氏が筆頭株主であるG.Pホールディングに売却し、ミュゼプラチナムはG.Pホールディングの完全子会社となったのです。
RVHは2019年3月期の連結売上高が587億4000万円でしたが、このうちミュゼプラチナムが393億5700万円(営業損益6億5000万円)、不二ビューティが104億5000万円(営業損益2億700万円)を占めていました。美容エステティック業界からの撤退を図り、ミュゼプラチナムを譲渡価格21億円2300万円で、不二ビューティーを57億3100万円で売却することとなります。
営業損益が発生していることから分かるように、売上こそ数百億円の巨大事業ではあったものの黒字化が難しく、RVHとして手放す決断をしたものと推察されます。
まとめ:ミュゼプラチナムは2度の事業売却対象となっている
以上、ミュゼプラチナムの歴史をまとめると以下の通りです。
実はミュゼプラチナムは2度の事業売却を経た上で、現在も事業を営んでいると言うことがわかります。
年 | 出来事 |
---|---|
2002年6月 | 有限会社ジンコーポレーション設立 |
2003年7月 | 美容脱毛専門サロン ミュゼプラチナム1号店を福島県郡山市にオープン |
2010年12月 | 美容脱毛専門サロン ミュゼプラチナム 100店舗突破 |
2011年 | ・トリンドル玲奈を起用したテレビCMを開始 ・知名度が飛躍的に向上するも殺到した予約を受けきれず、予約が取れないと批判が集まる |
2015年5月 | 冠スポンサーとしてゴルフトーナメント「ミュゼプラチナム」を主催 |
2015年12月 | 売却① ・借金の返済が滞り運営会社のジンコーポレーションが任意整理へ ・ジンコーポレーションの子会社、株式会社ミュゼプラチナムに事業譲渡 |
2016年1月 | ・株式交換により、株式会社ミュゼプラチナムが株式会社RVHの100%子会社へ |
2017年3月 | ・エタラビ、ミスプレミアムから事業譲渡を受けて統合 |
2020年2月 | 売却② ・株式会社G.Pホールディングへ事業譲渡 |
ミュゼプラチナムの倒産騒動の理由と原因
こうしたミュゼプラチナムの倒産騒動は非常に示唆に溢れており、脱毛サロンを選ぶ際にも大きな参考になります。倒産騒動の理由について、私は以下のように分析しています。
- 急拡大の実態は爆弾を抱える自転車操業
- 経営者の露出増加は悪いシグナル
- 2回の事業譲渡から分かる黒字化の難しさ
急拡大の実態は爆弾を抱える自転車操業
まず1つ目は「急拡大の実態は爆弾を抱える自転車操業だった」と言うものです。
ミュゼ含む脱毛サロンは料金を分割払いしていることが多いはずです。つまり施術が全て完了しないと全ての料金は支払われず、本来は施術回数に応じて前受金をその都度計上すべきですが、ミュゼは契約時に一括売上計上していたのです。
簡単に説明すると、例えば20万円の脱毛サービスを月1万円の分割払いで100人が申し込んだとすると、初月は1万円×100人で100万円の現金収入が得られることになります(単純化のため入金サイトは無視します)。一方でミュゼは、20万円×100人で2,000万円の収入が発生したと一括計上してしまっていたのです。
そしてその売上を原資にして更なる広告を打ち、集客した顧客から得た収益が回収できていないうちにまた更なる広告を、、、と完全に自転車操業のような形で、錬金術とも言える無理のある規模拡大をしていたのだと推察されます。
一方で予約を受け切れるだけの店舗数やスタッフが整っておらず、2013年頃からは「ミュゼは予約ができない」という批判や苦情が相次いで解約が殺到してしまったことは説明した通りです。そうなると規模拡大を前提にしたサイクルは一気に逆流してしまうので、瞬く間に経営破綻寸前まで追い込まれてしまったのでしょう。
これはスタートアップ企業でもよく起こる、典型的な失敗例の1つです(英会話教室のNOVAも同様の理由で経営破綻しています)。
学び:身の丈に合っていない急拡大を続ける会社は危険なので、急な広告露出などに注意した方がいい
経営者の露出増加は悪いシグナル
2つ目は「経営者の露出増加は悪いシグナル」と言うことです。
ジンコーポレーションの社長・高橋仁氏は、書籍の出版や競走馬の購入など華やかな生活を送っており、メディアへの露出も増えていました。ゴルフトーナメント「ミュゼプラチナム」も主催しており、ミュゼのプロモーションといえば体はいいですが、若年女性層という脱毛ターゲットからするとゴルフトーナメントに協賛する合理性は感じられません。
そんな高橋社長は、会社の資金の指摘流用や、女性トラブルなどが後に明るみになることとなります。
高橋社長は会社から個人で借入金があり、その額は3〜4億円と言われている。その使徒がわからないと財務担当部門でも頭を抱えている(同社関係者)
新潮社 Foresight(フォーサイト)
社長の出張で、他の同行者は別なホテルなのに彼女は社長と同じホテルに宿泊することもある。彼女は渋谷区の高級賃貸マンションに住んでいますが、家賃は60万以上。普通のOLが払える額ではない。(同社関係者)
新潮社 Foresight(フォーサイト)
「イタリアには、同社が使用している脱毛機器(DEKA社製)の本社があるので行くのも分かるが、アメリカはうちの支店もないし行く理由が分からない。カジノにはまっているからだと幹部が嘆いていました」(同)
新潮社 Foresight(フォーサイト)
最近はスタートアップの社長などでよく見られる例ですが、基本的には「事業以外で経営者の単独露出が増えているのは、間違いなく悪いシグナル」です。最近はTwitterなどで容易に発信できるようになったこともあり、その判断がつきやすくなったと思っています。その会社のサービスを受ける際、転職を考える際、取引を行う際は、少しSNSを調べたりググったりしてみるだけで、ある程度フィルタリングができるのでおすすめです。
学び:事業に関係ない経営者の個人露出が増えている会社・そのサービスは注意した方がいい
2回の事業譲渡から分かる黒字化の難しさ
そして3つ目は、「2回の事業譲渡から分かる黒字化の難しさ」と言う問題をミュゼは今も孕んでいると言うことです。
説明した通り、ミュゼは「ジンコーポレーション→RVH」、「RVH→G.Pホールディング」と2回事業譲渡をされています。そして1回目は事実上の経営破綻、2回目は売上は400億円近いものの利益は赤字で営業損益6億5000万円という状態でした。
つまり、一度ならず2度も経営難による事業譲渡に至ってしまっていると言うことです。競合の脱毛サロンが増える中で、全国最大の店舗数維持に必要な固定費や、ブランド維持に必要な巨額のプロモーション費用が足を引っ張っていると考えられます。これは構造的な課題であり、何度事業譲渡を経ても根本的な課題は解決されないでしょう。
これはあくまで私の予測になりますが、ミュゼプラチナムは近い将来、再び事業譲渡されることになると考えています。競合が増える事業環境は厳しさを増す中で、「ミュゼ」と言う大きな武器とも言えるブランド力が抜本的な構造改革を妨げてしまうことでしょう(規模縮小の議論になっても「全国最大と言う強みを捨ててはいけない」となる気がするのです)。
そのためミュゼプラチナムでは脱毛サービスを受けない方が良いと言うのが私の意見です。
学び:二度あることは三度ある、倒産騒動や事業譲渡など悪いシグナルがあるサービスには注意した方がいい
ミュゼプラチナムの倒産騒動で返金はされた?
ミュゼプラチナムの倒産騒動で、お客さんが支払った料金は返金されたのでしょうか?
ミュゼは2006年から解約時返金制度を導入しており、現在も条件を満たしていれば返金が成立します。
「両脇脱毛完了コース」は契約日から1年以内なら施術を行なっていても全額返金の対象です。そして他のコースやプランでも最終来店から2年以内ならいずれも返金の対象になります。
- 施術を一度もしていないコース、プランは全額返金
- 施術を行なった場合は総額から、1回分の金額×施術回数を差し引いた金額を返金
破産騒動時には実際に倒産すれば240万人の会員に返金が行われず、NOVAに続く社会問題になるのではと懸念されていました。しかし最終的には倒産せずに事業譲渡されたため、返金は問題なく行われていると推察されます。
通っている脱毛サロンが倒産したときに返金ができるか、支払い停止ができるかなどの対応についてはこちらの記事で解説しているので、脱毛を検討している方はぜひみていただけたらと思っています。
倒産の危険がある脱毛サロン・クリニックは絶対に選んではいけない!
このように、万が一通っている脱毛サロンが潰れる・破産する・倒産するようなことがあった場合には、返金もされず、サービスも受けられないことが一般的です。
実際にエタラビや脱毛ラボが倒産した際には、弁護士を通じて集団訴訟を検討する方もいたようですが、そもそもその手間暇は果てしなく、結局は泣き寝入りになってしまうことが多いはずです。
そのため、私は脱毛を検討している方には「倒産や破産のリスクがないサロンやクリニックを選ぶこと」を他のどんなことよりも大切にしてほしいと考えています。これは実際に世の中で起こった事実なのです。
まとめ
ミュゼプラチナムの破産騒動について、その理由や原因を説明させていただきました。
こうしてビジネス的な側面から見てみると、「事業譲渡を繰り返している脱毛サロンは選ばない方が良い」など新しい側面が見えてくるのではないでしょうか。他のポイントも含めて脱毛を検討している方に向けた選び方や基準はこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください!