元外資系戦略コンサル・VCの米国株投資方針に対する一考察

 
  • どのような基準で株式投資を行っているのか?
  • 投資先を判断する際の考え方を知りたい

こんな疑問やお悩みに(私の見解から参考までに)答えます。

この記事でわかること

  • 私自身の投資方針について
  • その投資方針をとっている理由
  • その方針に基づいて投資を行う際に重視するポイント

 

この記事を書いている人:チルbot

  • キャリア:東大・海外大を卒業後、外資メーカー・外資戦略コンサル・VCにて勤務
  • 守備範囲:英語(TOEIC980、TOEFL iBT95 ※非ネイティブ)、マーケティング・ファイナンス、デザイン・制作(Adobe全般)、テクノロジー(プログラミング・XR)、スタートアップ(北米・アジア)

 

読者の皆様への前置きメッセージ

何回かご紹介している通り、私は主に米国株での資産形成を半ば趣味的に行っています。

最近では投資に関する様々な情報を手に入れられるようになった一方で、情報過多の中、自分なりの投資方針を持つことが難しくなっているのではないかと感じています。

もちろん常にアップデートはかけつつですが、4年ほどの経験の中で自分なりの投資方針をある程度形成されており、テンバガー(10倍株)と呼ばれるものも何回か引いたこともあります。

この記事を読むと、上場株投資について「一例として」私自身の投資方針がわかると思います。

(あくまで参考として投資は自己責任で行ってください。「こうすればうまくいく」という必勝法は何事にも無いので自分自身の頭で考えることが1番の近道です)

※私たちのステマ規制への対応方針:当サイトの運営にあたっては、実体験を基に公平性・客観性を心がけ、読者の皆様を第一に取り組んでいます。企業から商品提供や広告依頼を受け、広告/PRの内容が含まれる場合もありますが、コンテンツの基準や判断軸には一切関与させておりません。

私の投資方針:Exponentialな成長を遂げ得る企業へ投資をする

ものすごくざっくりいうと、私は中長期的にExponential(指数関数的)な成長を遂げ得る企業を対象として投資を行っています

Lenear vs Exponential

世の中には大きく分けて2つの成長の仕方が存在します。Lenear(線形的)とExponential(指数関数的)とです。

Lenearは線形的という名前の通り、毎月・毎年着実な成長を遂げます。一方、Lenearは最初はあまり成長が芳しくないものの、ある時(Tipping Pointと呼ばれます)を超えると爆発的な成長を遂げ、Lenearに成長しているプレイヤーを圧倒いう間に置き去りにし、市場を破壊(Disruption)してしまいます。

Lenear vs Exponential

最もわかりやすい例は、最近で言うとTeslaではないでしょうか。私は株価が$30程度だった2016年からテスラへの投資を行っていましたが、世間からの声は酷いものでした。CEOのイーロン・マスクは奇人変人扱いされ、車業界はもちろんアナリストも誰も見向きもしませんでした。特に2018-2019年頃は倒産や身売りも噂されたほどで、私自身何度も売ってしまおうと考えました。

テスラの株価
チルbotがinした2016年9月からのTeslaの株価推移

しかしイーロン・マスクの強烈なビジョンの下、2020年をTippingPointとしてTeslaはとうとうExponentialな成長を遂げることになります。トヨタ自動車が数%ずつの成長を遂げている間に、Teslaは2020年で2000%、つまり20倍にも登る成長を遂げました。2021年2月現在の時価総額はTeslaが$7499億(74兆円)、トヨタ自動車が26兆円と3倍近くの差をつけてしまっています。

TeslaとToyotaの株価比較
テスラとトヨタの株価比較

もちろん時価総額だけで会社のポテンシャルが全て図れるわけでは無いですが、EV・バッテリー・自動運転・自動車保険など様々な領域でTeslaはデファクトを築き、世の中を大きく変え得るでしょう。このように世の中を大きく変える企業は得てしてExponentialな成長曲線を描き、私はそうした見込みがある企業に対して投資を行っていると言うことです。

Exponentialな成長をし得る企業へ投資を行う理由

それでは、なぜExponentialな成長をし得る企業へ投資を行うのか、その理由となる以下の3点について詳しく自分の考えを述べたいと思います。

Exponentialな成長をし得る企業へ投資を行う理由
  • 世の中に新陳代謝をもたらすビジョナリーの応援者でいたいから
  • 変わりゆく時代の中でビジョンこそが最もブレないものだから
  • 結果としてのリターンも大きいから

世の中に新陳代謝をもたらすビジョナリーの応援者でいたいから

まず1つ目の理由は、世の中に新陳代謝をもたらすビジョナリーの応援者でいたいからです。①世の中には新陳代謝があるべき、②新陳代謝をもたらすビジョナリーの応援者でいたい、の2つに分解して説明したいと思います。

①世の中には新陳代謝があるべき

1点目については、いくつかの例を用いて説明したいと思います。

例えば江戸時代は日本の歴史の中で最も平和な時代だったと言われていますが、それは徳川幕府が脅威となり得るあらゆる勢力に締め付けを行い、世の中から新陳代謝を完全に排除したからです。結果、300年安寧の時代を送る間に欧米列強とは歴然とした差がついてしまいました。そして欧米による侵略を目前として日本を救ったのは、坂本龍馬らがもたらした新陳代謝だったと理解しています。

先ほどのTeslaとトヨタの例で言っても、日本人としてはもちろんトヨタに頑張って欲しいですし、劣勢の中で日本の雇用基盤となる製造業を死守し、Woven Cityのようなチャレンジングなコンセプトを生み出す豊田社長はビジョナリーだと思います。ですが私は自動車産業における安寧の地位を脅かすTeslaのような強力なライバル、すなわち外圧があってこそトヨタがさらに進化し得ると考えています。

新しい世代が時代を作る、それに影響を受けて古い世代も進化を目指して脱皮をする、そうして世の中は良くなっていくのだと考えています。

②新陳代謝をもたらすビジョナリーの応援者でいたい

2点目について、私は「反逆者」「厄介者」と揶揄される「クレージー」な人々こそが新陳代謝をもたらして世の中を変えると信じています。AppleのThinks Differentで「クレージー」と呼ばれるような人たちです。

https://www.youtube.com/watch?v=W5GnNx9Uz-8

「世の中はこうなるべきだ」というビジョンを信じて行動を続けるビジョナリーの味方でありたいですし、投資はその1つの手段だと考えています(もちろん自分が供給できる資金など微々たるものでしかないのですが(笑))。そのため、私自身としても「世の中はこうなるべきだ」と共感できる事業を営む会社にのみ投資を行っています。

変わりゆく時代の中でビジョンこそが最もブレないものだから

1つ目がやや長くなってしまいましたが、2つ目の理由はビジョンこそが最もブレないものだと考えているからです。世の中は急速に変化を遂げています。それは投資においても例外ではなく、毎時毎分環境は目まぐるしく変わっており、指標に姿を変えて我々の考える前提を揺り動かしています。

こうした前提が変わってゆく環境においては、①変わりゆく情報にキャッチアップし続ける、②その中でもブレないものを見つける、の2つのアプローチがあると思います。①について努力をしつつも限界がある中で、私は②において「経営者のビジョン」をモノサシとして考えていると言うことです。

急速に変化を遂げる世の中において、やはり人間のビジョンこそが1番の根幹であって、ブレにくいものだと思います。自分の思考法の抽象から具体への演繹性という特徴もあるかと思いますが、やはり本質的なところを明確にして、具体である戦術にはバラエティーと斬新さを用いる企業は非常に魅力的だし、最も成功する確率が高い、と思っています。(一方でWeWork問題のような結果も招き得ますw)

結果としてのリターンも大きいから

最後の理由は、Exponentialな成長を遂げる企業への投資は結果としてのリターンも大きいからです。

これについては私がかつて身を置いていた世の中で最もExponentialな成長が期待されるマーケット、すなわちスタートアップ投資マーケットにおける特性から説明したいと思います。

スタートアップ投資ではテンバガーは日常茶飯事

10倍のリターン獲得は「テンバガー」と呼ばれ、投資家の間では夢として語られますが、スタートアップ投資マーケットにおいては、テンバガーは日常茶飯事でした。むしろダブルバガー(2倍のリターン獲得)程度では「いやいや何やってんの?」と揶揄されるくらいです。(起業家・投資先あってのVCなので、こうしてマネーゲームチックにリターンだけで語るのは好きではなく、そうあるべきでないとも考えていることを断らせてください。「〇〇を当てた」という言い方には辟易とします・・・)

それでは何故そのような莫大なリターンが実現し得るのか、①資金供給側、②資金調達側という2つの観点から説明したいと思います。

資金供給側の視点

これはまた別の記事にまとめたいと思いますが、スタートアップ企業に資金供給を行うVCは、最低でも4倍のリターンを期待されて機関投資家などから資金を集めます。「リスク高いスタートアップ投資に金出すんだから、それくらいのリターンは返せよ」ということですね。ものすごく単純化すると、この時点で最低でも4倍以上のリターン獲得が必須になるわけです。

DCF法のような伝統的ファイナンス手法では正しく価値を測れない企業のポテンシャルを見抜き、投資を行うことで莫大なリターンを狙うのです。(一方でVCはリターンの80%をポートフォリオの20%の投資先が生み出すモデルなので80%の失敗案件が存在します。そのため個人投資においては、VC時代の投資よりも厳選した銘柄に対して投資をするようにしています)

資金調達側の視点

それでは何故VCは莫大なリターン獲得が可能なのか?それはVCから資金調達するスタートアップが、Exponentialな成長を遂げるからです。Lenearな成長を遂げる企業やマーケットの穴(Unfair Advantageなどと呼ばれます)を付き、追いつけないような差を一点突破で一瞬のうちに築いてしまうのがスタートアップの基本戦略であり、そのためのリスクマネーを提供するのがVCの役割です。

コラム:SPACによる上場マーケットと未上場マーケットの融和

「でもそれってスタートアップ投資、つまりは未上場マーケットの話でしょ?上場株投資には関係なく無い?」と思う方もいらっしゃるでしょう。確かに上場株投資の対象となるような、一定まで成長した企業では同じようなリターンは狙い辛いかもしれません。

しかし、上場マーケットと未上場マーケットの境目を壊すような仕組みが最近誕生し、同じようなリターンを狙いやすい環境が生まれています。それこそがSPACです。

詳しい仕組みは割愛しますが、SPACという仕組み誕生により、アメリカのNASDAQには成長過程(スタートアップではシリーズB・シリーズCなどと呼ばれます)の会社が多数上場するようになりました。つまりスタートアップ投資を民主化したのがSPACであり、これによって個人でもテンバガーが狙えるチャンスは圧倒的に広がりました。

逆に言うと、投資資金が紙クズになるリスクも拡大しているということであり、実際に詐欺のような実態がないSPACは非常によく耳にするので是非注意して欲しいと思います。

Exponentialな成長をし得る企業の見抜く際の重要ポイント

続いて、Exponentialな成長をし得る企業の見抜く際に、自分が大切にしている価値観を紹介します。こうして書くと「必勝法」のように見えてしまいますが、そんなものは存在しないのであくまで一個人の考え方として参考にしていただけたらと思います。

Exponentialな成長をし得る企業の見抜く際の重要ポイント
  • 大局的な視点から見た世の中の動き
  • 経営者のビジョン
  • 現場に飛び込んで得られる一次情報

大局的な視点から見た世の中の動き

1年後2年後にこの会社はどうなるかというよりは、5年後10年後に世の中はどう変わっていくか、ということを良く考えます。

例えば、私がビットコインを知ったのは2013年の頃でしたが、当時はアベノミクスによる大規模金融緩和やキプロスでの金融危機などが起こっていた頃でした。アベノミクスを見て「これだけお金をジャブジャブ刷り続けていたら、法定通貨の価値ってどうなるんだろう?」と考えていた矢先にキプロス危機によるユーロ不信が起こり、法定通貨の将来を暗示しているように見えたのです。

そんな私にとってビットコインは法定通貨の負を解決する革新的なソリューションに感じられ、その先見性に目をつけて投資を行いました。(2017年頃にはそうした思想とは全く異なる投機的な側面が強くなり、全て売ってしまったのですが・・・w)

ということで、その企業が描く未来のシナリオに共感できるかどうか、「世の中はこう変わっていくだろうし、そうあるべきだ」という自分なりのシナリオに企業が合致しているかどうかには重きを置いています。

経営者のビジョン

2つ目のポイントは経営者のビジョンです。こちらは前述した通り、俯瞰的で高い視座から物事を考えて、世の中を変えていくような事業をしている会社や人こそが世の中を変えていくため、リスクをとってサポートするべきだ、という自分の哲学に基づいています。

もう少し踏み込むと、ビジョンを理解するため経営者のバックグラウンドやインタビューはしっかり目を通したりします、海外のYoutubeだと長めのインタビューが多く載っているのでオススメです。また、ブレないビジョンはシンプルに表せるとも思っています。例えば私のポートフォリオの一定を占めているSnapのビジョンは「Snap Inc. is a camera company.」ですが、世の中の切り取り方を「カメラ」とシンプルに抽象化したビジョンは非常に優れたものだと感じています。

Snap Inc. is a camera company. We believe that reinventing the camera represents our greatest opportunity to improve the way people live and communicate.We contribute to human progress by empowering people to express themselves, live in the moment, learn about the world, and have fun together.

 

(Snap Inc.はカメラカンパニーです。 当社は、カメラを改革していくことにより、私たちの生活やコミュニケーションの方法を、更に素晴らしいものにできると考えています。 ユーザーの皆さまが自己表現の世界を広げ、毎日を楽しみながら世界を体験し、その喜びを仲間と分かち合うことができるようにすることで、人類社会の発展に貢献していきます)

Snap Inc.のビジョンより

こうして言うと「ビジョナリーは海外にしかいないのか!」となりがちですが、国内ではサイバーエージェントの藤田社長が非常にビジョナリーだと感じています。藤田社長の本は名著ばかりですが、特に「起業家」は物凄くおすすめです。単なる広告代理店だったサイバーエージェントが、藤田社長の強烈なビジョンと胆力のもとでメディア企業に生まれ変わる過程を詳細に教えてくれます。(そのため、僕はAbemaTVは必ず成功すると考えています。どうみてもExponentialなモデルだからです)

海外では言わずもがな、イーロン・マスク氏の以下の本などからは強烈なビジョンを感じ取れるかと思います。

なんか出過ぎた物言いが多くなってしまっているように感じており恐縮です。。

現場に飛び込んで得られる一次情報

Exponentialな成長をし得る企業の見抜く際の重要ポイント、最後の1点は「現場に飛び込んで得られる一次情報」です。世の中にないアイデアや事業を作る起業家は、AppleのThinks Differentでは「クレージー」と呼ばれるというのは、前述した通りです。

https://www.youtube.com/watch?v=W5GnNx9Uz-8

大多数からは「反逆者」「厄介者」と呼ばれるものの、そんな「クレージー」な人が持つ思想やビジョンは少数の熱狂的なファンの心を強く捉えます。その少数の熱狂的なファンは、イノベーター理論では「イノベーター・アーリーアダプター」と、

デレク・シヴァーズの「社会運動の起こし方」では「ファーストフォロワー」と呼ばれるものです。

https://www.youtube.com/watch?v=V74AxCqOTvg

そう、優れた事業やサービス、それを生み出すビジョナリーには、どんな段階においても必ず熱狂的なファンが存在するのです。99人が揶揄をしていようとも1人が熱狂しているようなものにこそ、投資をするチャンスがあると私は考えています。

コンサルやVCでは特にそうだったのですが、数字やポンチ絵などの抽象化された情報で分かった気になってしまうことは(自戒含め)非常に多いように感じています。ですが、そうした情報からは現場の熱狂や逆にリスクとなる負の熱狂は読み取ることはできません。

それがサービスやソフトウェアなのであれば実際に自分で使ってみる、熱狂している人やコミュニティにコンタクトしてみる、方法はいくらでもあります。一次情報はやはり最強のアドバンテージですし、何よりその方が人生の幅が広がり楽しいというのが自分の感覚です。(ちなみにUnityであれば日本語のチュートリアルがあまりないので、以下の[affi id=28]のチュートリアルがお勧めです)

https://www.udemy.com/course/unity-c-sharp-scripting/
UdemyのUnityのチュートリアル
UdemyのUnityのチュートリアル

その他

今回は、あまりないであろう定性的な、感覚的な観点をメインで紹介させてもらいましたが、その他、独占的な市場を築く方法や、Moat(参入障壁の作り方)、採用人材から見る会社の向かう方向などももちろん判断基準にしますし、定点観測的にPL/BSなどの決算資料もチェックします。これらについては個別具体的な企業紹介の中で順に紹介できたらと思います。

まとめ

ということで、Exponentialな成長をし得る企業へ投資を行う理由や、Exponentialな成長をし得る企業の見抜く際の重要ポイントを紹介させていただきました。個別企業紹介の前に、こうした自分の考え方を伝えるべきではないかと考えて始めた記事でしたが思わず長くなってしまいました。。。

今後、個別銘柄や市場の紹介をしていくと思いますが、その度にこの記事を引用しようと思います。何度も繰り返しになりますが、投資には必勝法は存在しません。自分はこの投資スタイルが好きなのでそうしているだけで、あくまで参考としていただけたらと考えています。

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