元VCによるClubhouseのビジネスモデルに関する一考察

スタートアップトレンドについて
  • 最近話題のClubhouseって今後どうなるの?
  • ビジネスモデルやマネタイズ方法は?

こんな疑問やお悩みに(私の見解から)答えます。

この記事でわかること

  • 音声SNSアプリ・Clubhouseの今後のマネタイズ・ビジネスモデル予想
  • 収入・費用面における既存のSNSとClubhouseの大きな違い
  • スタートアップ企業の分析の仕方


この記事を書いている人:チルbot

  • キャリア:東大・海外大を卒業後、外資メーカー・外資戦略コンサル・VCにて勤務
  • 守備範囲:英語(TOEIC980、TOEFL iBT95 ※非ネイティブ)、マーケティング・ファイナンス、デザイン・制作(Adobe全般)、テクノロジー(プログラミング・XR)、スタートアップ(北米・アジア)


読者の皆様への前置きメッセージ

以前紹介した音声SNSアプリ・Clubhouse(クラブハウス)ですが、爆発的に広まっていますね。
»参考:『とうとう日本上陸!リリース1年で時価総額1000億円のアプリ・Clubhouseについて元VCが本気で考察』

芸能人・有名人も続々参戦し、スタートアップ界隈の知人たちは夜な夜なClubhouseで語り合っています。人と人とのじっとりとした触れ合いが好きな日本の国民性がどハマりしているように感じます。

そんなClubhouse、現状はマネタイズをしていませんが、今後どのようなビジネスモデルを構築していくのでしょうか?

Clubhouseの今後、マネタイズ手法やビジネスモデルについて、元VCによる一考察をお送りします。Clubhouseに限らず、スタートアップやビジネスに興味がある人には役に立つ内容だと思います。

元VCによるClubhouseのビジネスモデルに関する一考察

結論ファーストということで、Clubhouseのビジネスモデルに関する一考察は以下のような内容になります。

Clubhouseのビジネスモデルに関する一考察
  • 収入面の特徴
    • toBマネタイズ:相性が悪いため恐らく手を出さない
    • toCマネタイズ:チケット・ギフティング・コマース中心に構築
  • 費用面の特徴
    • 低いデータ通信量・クラウド利用料
    • 低い制作・仕入れコスト

それぞれについてざっと自分の考えを記してゆきたいと思います。

マネタイズについて

まずは「Clubhouseってどうやって儲けるの?」という収入面を担うマネタイズについて。

ある程度構造的に考えた方がよいので、toB・toCに分けて考えようと思います。言わずもがなですが、toBはClubhouseを魅力に思う企業からお金を取るモデル、toCはClubhouseのユーザーである私たちからお金を取るモデルです。

toBのマネタイズについて

まずはtoBのマネタイズ、これも①利用料徴収モデル、②広告モデル、の2つに分けて考えましょう。

①利用料徴収モデル

例えば企業がSlackやOutlook、はたまたワードやエクセルなどを使うと、運営企業に利用料金を支払わなければいけません。

これが利用料徴収モデルですが、ClubhouseはtoBの利用料徴収モデルは決して行わないと考えています。

というのは、こうしたソーシャルコンテンツ型のプラットフォームは、一般ユーザー・企業を含めたユーザーに継続して質の高いコンテンツを作らせ続けることが場の魅力を高めることとなり、その際には以下のa-cが競争要因となるからです。

  • a. 優れたCreationツールの提供
  • b. Creationツールを通したユースケースの創造(TikTokのリップシンクなど)
  • c. (a・bも含めて)優れたCreationを民主化すること

「お金払わなきゃClubhouseで発信させんで」というみかじめ料を取ることはこれに逆行するのはお分かりでしょう。

これらのことは、YoutubeやInstagram、Twitterといった既存ソーシャルコンテンツ型のプラットフォームにおいて、企業やブランドが無料で発信をしていることのアナロジーからもわかると思います。(厳密には、UGC・PGCというコンテンツ属性の違いも影響します、PGCの場合は利用料徴収モデルが成立しやすいです)

「Clubhouse活用コンサル」のようなスモール周辺産業は生まれると思うので、今がチャンスです!w

②広告モデル

toBのマネタイズの2つ目としては、テレビやラジオと同じ仕組みとしてスポンサーからの広告費収入が挙げられます。

ラジオやSpotifyが近いアナロジーになると思いますが、なんか想像できそうですよね。

しかし私は、ClubhouseはtoBの広告モデルにも当分手を出さないのではと考えています。

理由は、a. ユーザー体験低下の誘発 、b. 広告価値向上との相性の悪さ、の2つです。

a. ユーザー体験低下の誘発

そもそも広告とは嫌われているものです。AppStoreの無料アプリランキング1位が広告ブロッカーなのは有名ですね。

これがYoutubeのようなストック型のコンテンツプラットフォームや、フロー型であってもFacebookやTwitterのタイムラインのように定式化されたコンテンツフォーマットであれば広告を差し込む余地があるのですが、Clubhouseは定式化とは真逆にあります。

だって、いつ・だれとだれが・なにについて・どのくらい話すか、その全てがアンコントローラブルなのですから。

そんな不確定要素だらけの中に広告を挿入することは極めて難しいかつ、ユーザー体験を大きく損なうと考えています。

b. 広告価値向上との相性の悪さ

若干頭出しをしてしまいましたが、不確定要素だらけのClubhouseはまずもって広告と相性が悪いです。

それに加えて、広告価値向上、つまり広告の単価を上げて広告ビジネスで儲かるようにすることも難しいと考えています。

テレビやラジオ、Youtubeなどは番組ごとに視聴者層を類推・測定し、広告効果を算定・値付けしており、特にインターネットメディアにおいてはそのターゲティングの性質が広告価値を向上させる要因になります。

しかしClubhouseにおいては、番組が発生するタイミングも、そのホストやオーディエンスも予測できないのは前述した通りです。

つまりClubhouseにスポンサードすることはできるが、それ以上の広告の高度化、ひいては広告価値向上が難しいということです。

そのため、toBでマネタイズする場合は人気パーソナリティによる定期番組が必要で、PFが一定に育ってきたタイミングでそうしたものはいくらか発生するのだろうと思います。一方でそれをコンテンツ課金・広告、どのような形でマネタイズするのか、そもそもしないのかは不明です。

toCのマネタイズについて

続いてtoCのマネタイズについて考えてみます。

ストック型・フロー型

その前に、ストック型・フロー型という2つのコンテンツの種類について説明させてください。

ストック型のコンテンツとは、YoutubeやNetflixのように溜められたコンテンツを楽しむ形態、そしてフロー型のコンテンツとはTwitterやInstagramのように流れてゆくコンテンツを楽しむ形態のことです。

厳密にはTwitterやInstagramもストックしますが、消費コンテンツの大部分は「今」流れているコンテンツです。

ストック型・フロー型とマネタイズの分類

これらのコンテンツの種類に合わせて、toCのマネタイズについては以下のような相性があります。(と私は分析しています)

  • ストック型のコンテンツに相性がいいマネタイズ:コンテンツ課金、広告
  • フロー型のコンテンツに相性がいいマネタイズ:チケット・ギフティング・コマース

ストック型・フロー型それぞれでマネタイズの難しさに差があるというわけではなく、相性が良いマネタイズ手法が異なるということです。

フロー型のコンテンツは瞬間的に爆発的な熱量を生み、中国ではライブコマースやギフティングで凄まじいお金が発生しています

(このあたりはClubhouseのリード投資家、アンドリーセンが提唱する「パッションエコノミー」にも近いです)。

Youtubeのスパチャのような機能や、限定チケットで入れるプレミアム配信がClubhouseと相性がよいのは想像に難くないでしょう。

芸能人の楽屋裏トーク生配信にチケットやギフティングで課金するするのはイメージがつきますが、一方で熱量が欠けるストック型コンテンツとはこれらのマネタイズ手法は相性が悪くなります。

ビジネスモデルについて

というわけでClubhouseのビジネスモデルについては、以下のようになるわけです。

収益は今までみてきたように入ってくるお金、費用はClubhouseを運営するために出ていくお金です。

Clubhouseのビジネスモデル
  • 収益:toCマネタイズ
    • チケット
    • ギフティング
    • (コマース ※コンバージョンに遠そうなので優先度は低いはず)
  • 費用:
    • ①プラットフォーム手数料
    • ②人件費(開発・運用)
    • ③データ通信量・クラウド利用料
    • ④Clubhouseでは発生しない費用

これまでは収益部分についてみてきましたが、費用部分についても非常に大きな特徴があるので解説させてください。

結論から述べると、①プラットフォーム手数料、②人件費、は他のテック企業と同じだが、③データ通信量・クラウド利用料、そして④他のライブ配信アプリでは発生するがClubhouseでは発生しない費用、がClubhouseの費用面における特徴になるということです。

費用①:プラットフォーム手数料

まずはプラットフォーム手数料から、こちらは、俗に「Apple税」「Google税」と呼ばれる、iPhone・Androidのプラットフォーム使用料金です。

(2021年2月現在、ClubhouseはiPhoneのみの対応です)

iPhone・Android上のアプリでユーザーから課金が行われるたびに、その30%程度を手数料として徴収するものです。

ClubhouseもiPhone上のアプリであるため、世の中のアプリ運営企業と同じく、アプリ上で課金された収入の約30%が手数料として費用になります。

プラットフォーム手数料回避問題

収入の30%を徴収されるというのはなかなかのインパクトです、どうにかして回避する方法はないのでしょうか。

このプラットフォーム手数料徴収を逃れるには、アプリ上ではなくWEB上で決済を行わせるというものがあります。

しかしこの迂回決済を続けていると、当然Apple・Googleに睨まれることとなります。

昨年、人気ゲーム・Fortnite(フォートナイト)の製作会社であるEpicGamesが、自社ゲームユーザーに対してWEB上での決済を推奨していた結果、Appleから受けた警告に対して反旗を翻したのは記憶に新しいでしょう。

Nineteen Eighty-Fortnite – #FreeFortnite

Epic GamesはApp Storeの独占に異議を唱えました。報復として、Appleは10億のデバイスでFortniteをブロックしています。fn.gg/freefortnite へアクセスし、2020年を「1984」にしないための闘いに参加してください。

このプラットフォーム手数料は、「Clubhouseのマネタイズ」で先に述べた「①利用料徴収モデル」に該当します。

iPhone・Android上でアプリを通じでお金を稼ぎたい企業(一部個人)から利用料を徴収するということですね。

「あれ、利用料徴収モデルってエコシステムの発展を妨げるんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、30%の手数料を取られたとしても世の中のモバイルアプリ運営・制作会社は、iPhone・Androidを通して莫大な収益を産んでいるのです。

利用料を徴収されるUGC(後ほど説明します)のコンテンツプラットフォームを使いたがる人はいませんが、利用料を差し引いても莫大な収益を上げることができれば使わざるを得ないのです。これはひとえに、iPhone・Androidのえげつないほどの浸透具合が要因ですね。

費用②:人件費

少々長くなってしまっているのでこちらは端的に、要はClubhouseの運営・開発にかかる人件費です。

分解すると、セールス・マーケティング・開発・コーポレートなどになるかと思いますが、一番比重が大きいのは間違いなく開発を行うエンジニアの人件費でしょう。

SOを発行することで目の前の額面を抑えることはできるかもしれませんが、この構造は世の中のテック企業と同じかと思います。

費用③:データ通信量・クラウド利用料

プラットフォーム手数料・人件費は他のテック企業と同じと述べましたが、Clubhouseの費用面での特徴の1つ目が「データ通信量・クラウド利用料」です。

アプリを通して世界中を行き交うデータにかかる通信量、そのデータを保管するクラウドストレージの利用料ですね。

一般個人で例えると、通信会社に支払う通信量と、iCloudなどのクラウド利用料です。

比較相手の検討

「他のテック企業」と雑にまとめてしまいましたが、正確に比較をするには正確な比較相手の規定が必要です。

(ここでの比較相手は、必ずしもClubhouseと争う競合ではありません、ビジネス構造を比べることを目的とした際の比較相手です)

Clubhouseの比較相手としてどのようなサービスが妥当でしょうか?私は「SHOWROOM」や「17live」などのライブ配信アプリ(PGC)、または「Twitter」などのような常習性が高いコンテンツプラットフォーム(UGC)が適切だと考えています。

比較相手との違い

端的に、Clubhouseはコンテンツ容量が圧倒的に小さいです。

動画という大容量データを送り続けなければいけないライブ配信アプリ、そしてメインはテキストなものの、写真や動画などの付加コンテンツを有し、過去ツイートも保存しなければいけないTwitterと比べ、Clubhouseは音声という軽量データであり、さらに保存の必要もありません。

つまりClubhouseは、データ通信量・クラウド利用料を圧倒的に圧縮できるのです。これは大きなアドバンテージでしょう。

費用④:Clubhouseでは発生しない費用

以上の①〜③がClubhouseの開発・運営で発生する主な費用ですが、実は4つ目として、比較相手では発生するがClubhouseでは発生しない費用が存在します。

いったいそれは何でしょうか、比較相手の1つとして挙げた「SHOWROOM」を相手に説明したいと思います。

SHOWROOM
SHOWROOM provides live performance broadcasts by idols and celebrities in virtual stadiums.

UGCとPGC

結論として、ClubhouseはUGS(User Generated Contents)のコンテンツプラットフォームであり、SHOWROOMはPGC(Professional Generated Contents)のコンテンツプラットフォームであるという、これまでも何回か出てきたUGC・PGCというコンテンツ属性の違いがあるのです。

UGCとPGCの違いは、以下の通りです。

UGCとPGCの違い
  • UGC(User Generated Contents):
    • プラットフォームを利用する一般ユーザーが作るコンテンツ
    • 例:Youtube, Instagram, Twitter
  • PGC(Professional Generated Contents):
    • 運営会社やプロのコンテンツ制作者が作るコンテンツ
    • 例:Netflix, Amazon Prime, Voicy, SHOWROOM

SHOWROOMではAKBやジャニーズを起用したプロコンテンツ(そうでないものもありますが)が配信され、Clubhouseではユーザーが楽しんで勝手にコンテンツを発信するという違いです。

そしてこのコンテンツ属性の違いが両サービスの費用構造に大きな違いをもたらすと考えています。

PGCには制作・仕入れコストが重くのしかかる

なぜなら、PGCの場合はコンテンツの制作・仕入れコストが発生するのに対して、UGCは発生しないからです。

これはNetflixが日本の民放全局を合わせても到底叶わないくらいの制作費を投じていることからもわかるでしょう。

SHOWROOMでもおそらくジャニーズ事務所やAKBのキャスティングに相当の費用・リベニューシェアが発生しており、それらが費用として見過ごせない割合になっていると考えられます。

Netflixはサブスクリプションによる安定収益があるため莫大な制作費をまかなえますが、投げ銭という不安定収益でこれらの費用をまかなわなければいけないSHOWROOMは明らかにビジネスモデル上のリスクが高いのではないかと思います。

そして、ClubhouseはUGCコンテンツプラットフォームなので、コンテンツ制作費が無料なのです。頼まなくても、お金を払わなくても、指原莉乃さんや堀江貴文さんなどの有名人が自ら使ってくれます、Youtubeと同じですね。

その代わりClubhouseは「ユーザーが楽しんでコンテンツを作り続けること」にフォーカスしなければならず、そのための機能開発に莫大な費用を投じて強化し続けることでしょう。

Clubhouseは当面「ユーザーを満足させること」にフォーカスする

というわけで、ユーザーのContents Generationを加速させ続ければ、Clubhouseのマネタイズ機会は主にtoCで潤沢に存在しています。

さらにSHOWROOMなどの類似ライブ配信と比較しても、UGCというコンテンツ属性上、Clubhouseは儲かりやすい構造になっていると思います。

これらを見越して、Clubhouseは当面の間「ユーザーを満足さる新しい仕組みを作り続け、一瞬の熱量を上げること」にフォーカスするのではないでしょうか。

そして我々がClubhouseなしでは生きられなくなった時にはじめてマネタイズについてチャレンジするはずです。

まとめ

Clubhouseのマネタイズ・ビジネスモデルについて考察させていただきました。

果たして現在の熱量が今後も保たれるのか、今後も注視したいと思います!

コメント

  1. こんにちは!
    ブログランキングから来ました。
    最近話題のClubhouseなんだろうと思っていました。
    そのうち試してみたいですね。
    詳しく説明していただいてありがとうございます。
    また寄りますね。

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