東大卒の元戦略コンサルが脱毛関連市場・業界の現状と今後を徹底分析

東大・海外大を卒業後、外資メーカー・戦略コンサル・VCで勤務していた「チルbot」です!

飲食店や美容院を訪れた時や、ICL手術やヒゲ脱毛などのサービスを受診する際、私はその業界の分析を行います。

元々の性格や職業柄、考察や分析が好きなのもありますが、市場や業界を分析することで「そのサービスを受けるべきか」「どのような会社や店が優れているか」を理解することができ、選択の大きな助けになるからです。

今回はヒゲ脱毛を受けた経験から、脱毛関連市場・脱毛業界の現状、そして今後に関する分析を紹介したいと思います。脱毛を受けようと思っている方にはもちろん、就職を考えている方にも参考になるはずです。

ヒゲ脱毛の種類や、サロン・クリニックの選び方など、ヒゲ脱毛が気になっている方がまずすべきことをご説明します。

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脱毛業界の市場分析

さて、それでは早速ですが脱毛関連業界について、以下の4つの観点から市場分析を行いたいと思います。

脱毛関連業界の市場分析
  1. 脱毛関連市場全体のトレンドを分析
  2. 脱毛サービスの受け手となる消費者を分析
  3. 脱毛サービスの担い手となるプレイヤーを分析
  4. 脱毛関連市場に今後見込まれる変化を分析

難しそうに聞こえるかもしれませんが分かりやすく解説していくので早速進めていきましょう!

①脱毛業界の市場は成長トレンドにある

まずは脱毛業界の市場全体がどのようなものか、見ていきたいと思います。

国内エステティックサロン市場全体はダウントレンド

実は、脱毛を含む国内エステティックサロンの市場規模は微減トレンドにあり、2022年には3272億円と予想されています。これはサービスの受け手となる国内人口の減少というマクロトレンドが影響しているものと考えられます。

矢野経済研究所による「エステティックサロン市場に関する調査を実施(2021年)」より

これに含まれる脱毛関連市場も減少してしまっているのでしょうか?

脱毛関連市場は成長トレンドにあると予測される

微減している国内エステティックサロン市場の中で、脱毛関連市場については成長トレンドにあると予測しています。

近年の美容意識の更なる進化、脱毛の低下価格化による普及、そして何よりメンズ美容の一般化による男性脱毛市場という巨大な新市場の誕生が成長を強く後押ししていると考えています。

脱毛関連市場そのものの市場規模や推移に関するデータは見つかりませんでしたが、メンズリゼを運営しているリゼクリニックの契約者来院数が大幅に増加していること、この成長市場を狙って様々な新規プレイヤーが参入していることからも正しいものと考えられます。

脱毛サロン大手・リゼクリニックでは、老若男女で契約者数が大幅に増加している(医療脱毛専門院『リゼクリニック』調べ)

まずは「脱毛関連市場・業界って成長しているんだ」と思っていただけたら十分です。

②サービスの受け手となる消費者の需要は増加

次にサービスの受け手となる需要側について考えます。脱毛サービスを受ける私たちのことですね。分析にあたっては構造化して分解することが定石です。脱毛関連市場を需要側から見ると、以下のような計算式で計算することができます。

需要側から考える脱毛サービスの市場規模 = ①脱毛サービスの受け手の数 × ②1人あたりのサービスの生涯利用回数 × ③単価

簡単にいうと、①何人が脱毛サービスを利用して、②1人あたり何回脱毛サービスを利用して、③その脱毛サービスのお金はいくらになるか、を掛け合わせれば脱毛市場の市場規模が、消費者側から割り出せるということです。

このうち、①脱毛サービスの受け手の数、②1人あたりのサービスの生涯利用回数が特徴的なのです。

脱毛サービスの受け手の数は短調増加する

まず脱毛サービスの受け手の数は短調増加、増加の一途を辿るのではないかと考えています。

前述したように、脱毛の低価格化や男性の美容意識の変化などにより、かつて高い費用を支払える限られた女性のみのものだった脱毛サービスは、老若男女を対象としたものになっています。

その中でも主に20-30代の若年層がその伸びを牽引していると考えられますが、この世代がいずれは中年〜高齢世代になり、若年層以外でも脱毛文化が一般化して全世代に浸透してゆくことは間違いないと考えられます。

脱毛サービスの1人あたりのサービスの生涯利用回数は多い

次に脱毛サービスは、1人あたりのサービスの生涯利用回数が多く見込めるというのも特徴的です。

そして脱毛サービスと消費者の関係でもう1つ特徴的なものが「脱毛サービスは1人あたりの利用回数が多い・定期利用が見込める」というものです。1回施術をすればそれで終わりのICL手術とは違い、脱毛は定期的な通院が必要です。

永久脱毛をしたからといってその後永久に毛が生えてこないわけではありません。事実FDA(アメリカ食品医薬品局) や、AEA(米国電気脱毛協会)は永久脱毛の定義を以下のように定めています。

永久脱毛の定義
  • FDAによる脱毛の定義:一定の脱毛施術を行った後に再発毛する本数が、長期間において減少し、その状態が長期間に渡って維持されること
  • AEAによる脱毛の定義:最終脱毛をしてから1ヶ月後の毛の再生率が20%以下であれば永久脱毛と認める

当然すぐ永久脱毛後にすぐ生えてくるわけではなく、個人差もありますが10年程度は持つというのが一般的です。そんな人ばかりではないと思いますが、単純に考えると一生永久脱毛をしたい人は10年おきに脱毛サービスを利用するはずです。

そのため若い時期に脱毛サービスを利用した人はその後もサービスの利用者となる可能性が高いと考えられるので、1人あたりのサービスの生涯利用回数から見ても脱毛市場は成長が見込めるのです。ビジネスではこれをLTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー・生涯価値)と呼びます。「脱毛市場のLTVは非常に高い」ということですね。

②サービスの担い手となる参入プレイヤーは増加

続いてサービスの担い手となる供給側について考えます。

供給側、つまり脱毛サービスを提供するサロンやクリニックについては、新規参入プレイヤーがどんどん増えて混戦状態になっていることが特徴として挙げられます。そこで、以下のような脱毛業界の変化についてみていきたいと思います。

脱毛業界のプレイヤーの変化
  • かつての脱毛業界:大手プレイヤーの寡占状態だった
  • 現在の脱毛業界:新規参入プレイヤーが相次いでいる

かつての脱毛業界は大手の寡占状態だった

現在主流である光脱毛が日本に輸入されたのは2000年代のことです。そのため1990年台以前には電気脱毛(ニードル脱毛)かレーザー脱毛しか脱毛手段がなく、どちらも医療機関で医師しか取り扱うことができない状態でした。

結果として永久脱毛は100万円ほどもする高級な美容医療で、器具や機械、そして人材獲得の観点からして小規模のクリニックや個人経営のクリニックが参入できるものではなかったと考えられます。

当時から存在する脱毛業界の大手としては、メンズTBCなどを展開する1976年に創業されたTBCグループ、そしてダンディハウスなどを展開する1982年に創業されたミスパリ(MISS PARIS GROUP)が挙げられます。どちらも40年以上の歴史があり、木村拓哉さんやローラといった著名人を広告に起用しています。

こうした大手クリニックが主流だった脱毛業界に変化をもたらした要因としては、以下の2つがあると考えています。

扱いやすい光脱毛の登場

1つ目は「扱いやすい光脱毛の登場」です。

2000年代に日本エステティック研究財団がレーザー脱毛よりも出力を抑えた光脱毛の安全テスト・治験に成功したことで、医師でなくても使える光脱毛が登場しました。これによって医師でしか扱えない電気脱毛(ニードル脱毛)・レーザー脱毛に加えた第3の選択肢が誕生し、多くのプレイヤーが参入するきっかけになったと考えられます。

歴史の長いTBCグループ、ミスパリは光脱毛に加えて、電気脱毛も提供していますが、これはかつて電気脱毛が一般的だった頃の名残なのではないかと考えています。(結果としてTBCグループ・ミスパリの脱毛サービスは比較的高価格であるという特徴があります)

大手の穴をついたパッケージ提供

2つ目は「大手の穴をついたパッケージ提供」です。

例えば大手のTBCグループが運営するメンズTBCは、お客様の希望に合わせてカスタマイズするオーダーメイドプランを提供しており、「ヒゲ脱毛〇〇円」のような分かりやすいパッケージは存在していません。これは高額な費用を支払うお客様1人1人に寄り添って必要なサービスを提供するという高付加価値のサービス特性が表れているものなのでしょう。

一方で、消費者の中には「ヒゲ脱毛〇〇円」のような分かりやすく価格が安いパッケージの方が有難いという人も多いでしょう(私もその一員です)。不要なサービスを全て取り除いた1000円カットのQBハウスのように、消費者が求めているサービスに特化した分かりやすいパッケージ提供が大手の穴をついたのではないかと考えています。

TBCグループ、ミスパリは、高付加価値のエステティックサロンという築き上げたポジショニング、ブランディングを崩したくないはずです。その結果、低価格帯の脱毛サービスに参入しにくくなる、まさにイノベーションのジレンマが働いているのではないでしょうか(一方でどちらも非上場企業のため、自社のポジショニングや価値を守るのは戦略として間違っているとは思いません)。

現在の脱毛業界は新規参入が相次いでいる

以上のような要因から、現在の脱毛業界は新規参入プレイヤーが相次いでいます。

上述したように、脱毛関連市場全体が成長トレンドにあり、サービスの受け手となる消費者の需要も増加するであろうことを考えると、その市場を狙って新規参入プレイヤーが続出するのは当然のことです。

一方で、どんなに魅力的でも新規参入が難しい市場はたくさんあるはずですが、なぜ脱毛業界は新規参入プレイヤーが増加しているのでしょうか?それには以下の3つの理由があると考えています。

脱毛業界の新規参入のハードルが低い理由
  1. 在庫不要で低リスク
  2. 人材育成が容易
  3. 多数乱戦の業界構造
  4. 脱毛器具・機械の低価格化

あくまで「新規参入のハードルが低い」であって「新規参入の結果、成功することが容易」なわけではないことにご注意ください(脱毛業界の皆様へのリスペクトも込めて)。

在庫不要で低リスク

1つ目として、「脱毛ビジネスは在庫がいらず低リスクで開業可能であること」が挙げられます。

例えばコンビニであれば食材などの商品在庫が発生し、在庫の仕入れに必要な費用が収益に先んじて発生します。そしてもしその在庫が売れなかった場合、その分の費用は単純にマイナスとなってしまいます。そのため基本的には、在庫がいらないビジネスの方が参入リスクが低いとされています。

この観点で見ると脱毛サロンの開業に必要なものは、店舗、脱毛器具/機械、人材(脱毛エステティシャン)の3つのみで特別な仕入は必要ありません。「脱毛器具や機械はどうなの?」と思う方もいらっしゃるとは思いますが、おそらくは全額を払って購入するだけでなく、毎月支払うリースのような買取りではない契約形態が存在するはずです。

そのため、脱毛ビジネスは万が一失敗したとしても在庫分のリスクを背負う必要がないため、参入障壁が低いと言えます。

人材育成が容易

2つ目として、「脱毛業界は人材育成が容易であること」が挙げられます。

例えば病院を開くには医師免許が、弁護士事務所を開くには弁護士資格が必要であるように、人材獲得の難易度は新規参入の難易度に直結します。

歴史が古い医療脱毛には国家資格が必要で、医療用脱毛器は医師免許がなければ購入することはできません。一方で、現在主流になっている美容脱毛には資格は必要なく、器具の使い方や処置を学びさえすれば施術が可能となります。

当然以下のような民間資格は存在しますが、絶対必要なものではなく、研修制度をしっかり整えさえすれば一人前の脱毛エステティシャンを育成することが可能なのです、

脱毛に関する民間資格
  1. 認定美容脱毛エステティシャン資格
  2. 認定電気脱毛士資格(電気脱毛の国際ライセンス)
  3. 美容脱毛士資格
  4. CPE(認定電気脱毛士:Certified Professional Electrologist)
  5. 認定トータルエステティックアドバイザー資格
  6. 認定上級エステティシャン資格

逆にいうとオープンしたての脱毛サロンは他店舗からの移籍者でなければ経験が浅いエステティシャンである可能性もあるため、「脱毛エステティシャンとしてどのくらい働いているんですか?」と担当者に質問すると店の評価がある程度できるのではないかと思います。

多数乱戦の業界構造

3つ目として、「脱毛業界は多数乱戦の業界構造であること」が挙げられます。

多数乱戦の業界構造、英語ではフラグメンティッド・インダストリーとも言いますが、これは「限られたプレイヤーの一人勝ち」ではなく「多数のプレイヤーが乱立する業界になりやすい」ことを指しています。

例えば、コンビニのような業態は規模の経済が明確に働きます。例えば商品の仕入れでも交渉力が働きますし、大規模なマーケティング・プロモーションも効果を発揮します。結果として小売業は大手が圧倒的に有利となり、近くに個人経営の商店があっても、少し離れたコンビニやスーパーに向かうような人は多いのではないでしょうか。

それに比べると、器具を用いてサービスを提供する脱毛業界は規模の経済が働きにくいと言えます。当然大手であれば整った研修制度や蓄積されたノウハウによって受けられるサービスの質が高いことは期待できますが、例えば片道1時間かかる大手の脱毛サロンと、家から徒歩5分の場所にある個人経営の脱毛サロンであれば後者を選ぶ人は多いはずです。

そのため、個人経営のサロンであっても大手の穴をついた出店戦略をとれば成立する可能性は高く、大手が一人勝ちするような業界構造になりにくい、結果として多数のプレイヤーが乱立するような業界構造になり新規参入を後押しするのです。

脱毛器具・機械の低価格化

4つ目として、「脱毛器具・機械が低価格化していること」が挙げられます。

脱毛方法は、電気脱毛→レーザー脱毛→光脱毛と進化していますが、かつて電気脱毛しか手段がなかったときには、脱毛サービスは100万円ほどもする非常に高価なものでした。脱毛ビジネスには、脱毛器具の購入費用、店舗のリース代、人件費等の費用が必要ですが、このうち高価な脱毛器具の購入・契約費用が初期コストとして負担が大きかったのです。

しかしレーザー脱毛・光脱毛などの新しい技術の登場や、脱毛文化の普及により、脱毛器具・機械も低価格化が進んでおり、結果として脱毛にかかる費用も10万円〜20万円ほどになっています。この低価格化のトレンドは今後も続いてゆくものと考えられるでしょう。

脱毛関連市場に今後見込まれる変化

さて、脱毛業界について見てきましたが、ここまでをまとめると以下のようになります。

  1. 脱毛関連市場は成長トレンドが続く
  2. サービスの受け手となる消費者側の需要も拡大・継続する
  3. サービスの担い手となる供給側は多数乱戦の構造で拡大を続ける

それでは脱毛関連市場はこの状態のまま拡大を続けてゆくのでしょうか?実は私はそうは考えていません。既存の脱毛手段の代替品として、脱毛関連業界のゲームチェンジャーとなり得るものがいくつか存在するからです。

代替品の脅威①:セルフ脱毛

既存の脱毛業界を大きく変え得るものの1つ目は「セルフ脱毛」です。

通常の脱毛は脱毛エステティシャンが処置を行いますが、セルフ脱毛とはサロンに来たお客さんが脱毛器具を1人で使って脱毛を行うものです。「ハイジ」や「PREMIO」などのサロンが代表的ですね。

そしてセルフ脱毛は、通常の脱毛と比べて非常に安い価格となっています。脱毛サロンに必要なものは、店舗、脱毛器具/機械、人材(脱毛エステティシャン)の3つと言いましたが、このうち人材(脱毛エステティシャン)に支払う給与(変動費)分が不要になるからです。

そのため、価格が安いセルフ脱毛の登場は既存の脱毛サロンにとって脅威となるはずです。一方で、個人的には脱毛未経験者がいきなりセルフ脱毛をすること、それで満足いく結果を得ることは難しいと考えているため、2回目以降の継続利用手段として一般的になっていくのではないかと予想しています。

代替品の脅威②:家庭用脱毛器

既存の脱毛業界を大きく変え得るものの2つ目は「家庭用脱毛器」です。

家庭用脱毛器とはその名の通り、自宅でムダ毛をケアできる脱毛器のことです。サロンに足を運ぶ必要なく手軽にいつでも脱毛することができ、価格も3万円から5万円程度と脱毛サロンに比べて圧倒的に低価格となっています。

一方で、家庭用脱毛器はあくまで除毛や抑毛を目的としたもののため、毛が細くなったり、生えてくるスピードが遅くなったりする効果は期待できますが永久脱毛をすることは当然できません。

そのためセルフ脱毛と同じく、脱毛サロンの低価格の代替品、または2回目以降の継続利用手段になると考えられますが、今後の技術革新で脱毛サロンを代替するような製品が登場した場合には間違いなくゲームチェンジャーになるでしょう。

結論:セルフ脱毛・家庭用脱毛器には脱毛サロン市場は大きく侵食されない

以上、セルフ脱毛、そして家庭用脱毛器という2つの代替品を紹介させていただきました。一方でどちらも脱毛サロンを完全に代替するようなものになるとは考えにくく、店舗型の脱毛サロン市場は今後も伸長してゆくはずでしょう。

まとめ

脱毛関連市場・脱毛業界の現状、そして今後に関する分析を紹介させていただきました。こうした内容を踏まえると、脱毛サロンやクリニックを選ぶ際に役立てられるのはもちろん、世の中がまた違って見えてくるのではないでしょうか?

皆様の参考になれば幸いです!

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